『STP分析』という言葉は、マーケティングやコンテンツビジネスの現場で頻繁に使われます。しかし、その正確な意味や設計の要点まで理解されているケースは多くありません。
株式会社Cameenです。本記事は当社の運用知見をもとに解説します。
- STP分析とは「市場を分けて狙いを定める作業」のことではなく「Segmentation・Targeting・Positioningの3段階意思決定プロセス」のこと
- 本質はフレームワークではなく、3つの問いに順番に答えるための思考装置
- STP分析の3段階それぞれで決めるべき判断軸
- STP分析が機能しない典型3パターン
- 当社で8年運用してわかったSTP設計の実装ステップ
マーケティングの本を開いてもセミナーに出ても、「まずSTP分析から始めましょう」というフレーズを聞かない月はないです。セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング、この3つの英単語の頭文字を取った分析手法。1980年代にフィリップ・コトラーが体系化して以降、マーケティングの教科書の冒頭に必ず出てくる用語になりました。
では、いざ「STP分析って何のためにやるんですか?」「セグメンテーションとターゲティングの違いは?」「ポジショニングってブランディングと何が違う?」と聞かれると、答えに詰まる方が多いのです。「市場を分けて狙いを定める作業」という認識で止まって、STP分析が本当は何を決めるための装置なのか、ここまで掘り下げて使っている人は意外と少ない。こうした課題は、多くの事業者に共通します。
当社ではこのSTP分析を8年間、自社の商品設計とクライアント案件の両方で運用してきました。セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを毎月のように回し続けてきた中で見えてきたのは、STP分析は「市場を分ける作業」ではなく、「3つの問いに順番に答えるための意思決定プロセス」だということ。分析が目的なのではなく、商品設計と発信戦略の判断軸を作ることが本質です。
もう1つ繰り返し観察したのは、「STPの3つの順番を入れ替えて使っている人」が想像以上に多いという事実。Positioningを先に決めてからSegmentationを逆算で組み立てる、Targetingを最初に固定してSegmentationを省略する、こういう逆走パターンが頻発します。STPは順番が意味を持つフレームワークで、順番を崩した時点で機能不全になります。
今回はその「今さら聞けないSTP分析」を、表面的な解説ではなく、3段階の構造的役割と、当社で8年運用してわかった実装ステップまで深掘りしていきます。読み終わる頃には、自分の事業のSTPを紙に書き出して、商品設計と発信メッセージの判断軸が言語化できるレベルになっているはずです。
結論:STP分析の核心は「3段階の意思決定プロセス」
STP分析は、よく「市場を分けて狙いを定めて差別化する作業」と説明されるんですが、これだとSTPの本当の機能が見えません。本当の意味はもっと別のところにあります。
STP分析の本当の正体は、「市場・顧客・自社の3者関係を、Segmentation→Targeting→Positioningの順番で意思決定するための3段階プロセス」のことです。単なる分析手法ではなく、商品設計と発信戦略の判断軸を構造化するための思考装置です。
Segmentationは「市場を切り分けて全体像を把握する段階」、Targetingは「切り分けた市場の中から自社が戦う場所を選ぶ段階」、Positioningは「選んだ場所で顧客にどう認識されたいかを設計する段階」。3つは独立した分析ではなく、前段の結果を次段が引き継ぐ連鎖構造になっています。
業界の体感として、STP分析を「セグメントを書き出して終わり」「ターゲットペルソナを決めて終わり」と1段階だけで止めている事業者が大多数です。3段階を最後まで通して、ポジショニングステートメントまで言語化できている事業者は、私の観察だと2割程度。残り8割は途中で止まって、STPが商品設計や発信戦略に接続していない状態で運用されています。
STP分析の真の価値は、フレームワークそのものではなく、3つの問いに順番に答え切ることで得られる「商品設計の判断軸」「発信メッセージの判断軸」「価格設定の判断軸」、こういう実務的な判断基準の言語化です。STPを単発の分析作業として捉えるか、判断軸を作り続ける継続プロセスとして捉えるかで、得られる成果が大きく変わります。
なぜコトラーが「STP」という順番にこだわったのか
もう少し深く掘ります。なぜSegmentation→Targeting→Positioningという、この順番でなければならないのか。順番の必然性を整理します。
「STP分析」は、フィリップ・コトラーが1980年代に体系化したマーケティング戦略の中核フレームワークです。それ以前のマスマーケティング(全員に同じ商品を売る発想)から、ターゲットマーケティング(特定の顧客層に向けた商品設計)への転換期に登場しました。市場が成熟し、消費者ニーズが多様化する中で、「全員に売る」発想が機能しなくなった歴史的背景があります。
コトラーがSTPの順番にこだわった理由は、3段階の意思決定が階層構造になっているからです。Segmentationで「市場全体の地図」を描かないと、Targetingで「どこを攻めるか」が決められない。Targetingで「攻める場所」が決まらないと、Positioningで「その場所でどう認識されるか」が設計できない。順番を崩すと、後段の判断が空中分解します。
業界の体感として、STPの順番を守っている事業者と崩している事業者の差は、商品設計の精度と発信メッセージの一貫性に現れます。順番を守っている事業者は、商品ページ・LP・SNS発信・営業トーク、すべてが同じ判断軸で動いています。崩している事業者は、媒体ごとにメッセージがブレて、顧客から見た時の認識が定まりません。
日本では2000年代以降、STP分析がマーケティング担当者の標準スキルとして定着しました。大企業のマーケティング部署では新人研修でSTPを学び、中小企業の経営者向けセミナーでも頻出テーマになっています。ただし「知っている」と「実装している」の差が大きく、知識レベルで止まっている事業者が多数派です。
近年は、デジタルマーケティングの普及でSTPの運用方法が進化しています。アクセス解析データ・購買データ・SNS反応データ、こういう実データをSegmentationの根拠にできるようになり、STPの精度が大きく向上しました。仮説ベースのSTPから、データドリブンのSTPへの移行が業界の標準になりつつあります。
業界の進化として、STP分析を一度作って終わりではなく、3〜6ヶ月ごとに見直す運用が定着してきました。市場環境の変化、顧客ニーズの移り変わり、競合動向、こういう外部要因に応じてSTPを更新し続けることで、商品設計と発信戦略の精度を維持する流れです。STPを生きたフレームワークとして運用する文化が広がっています。
STP分析の現場で何が起きているか
STP分析の現場で、具体的に何が起きているか。3段階を5つのプロセスで整理します。
ステージ1:Segmentationで市場全体の地図を描く
市場をいくつかの軸で切り分けて、市場全体の地図を描きます。切り分けの軸は4種類が標準的です。(1)地理的変数(地域・都市規模・気候)、(2)人口統計的変数(年齢・性別・職業・所得)、(3)心理的変数(ライフスタイル・価値観・性格)、(4)行動変数(購買頻度・利用シーン・ブランド忠誠度)。この4軸を組み合わせて市場を分割します。
Segmentationでよくある落とし穴は、軸を細かく分けすぎてセグメント数が10〜20に膨れ上がるパターン。セグメントが多すぎると、後のTargetingで選択肢が爆発して判断が止まります。業界の標準は「市場全体を3〜5セグメントに分割する粒度」。これより細かくも荒くもしないのが運用の基本です。
ステージ2:Targetingで戦う場所を選ぶ
Segmentationで作った3〜5セグメントの中から、自社が戦う場所を選びます。選定基準は5つ。(1)セグメントの市場規模、(2)成長性、(3)競合状況、(4)自社の強みとの適合度、(5)収益性。この5基準でセグメントを評価して、最も適合度の高い1〜2セグメントに絞り込みます。
Targetingでよくある落とし穴は、「全セグメントを狙いたい」という欲が出て、絞り込みができないパターン。1社が同時に攻められるセグメントは通常1〜2個。3個以上を同時に攻めると、商品設計・発信メッセージが分散して、どのセグメントにも刺さらない状態になります。「捨てる勇気」がTargetingの本質です。
ステージ3:Positioningで認識戦略を設計する
Targetingで選んだセグメントの顧客に、自社をどう認識させたいかを設計します。Positioningのアウトプットは「ポジショニングステートメント」と呼ばれる1文。「○○な人にとって、当社の△△は××という点で他と違う」、こういう構造で1文に圧縮します。これが商品設計と発信戦略の判断軸になります。
Positioningでよくある落とし穴は、「当社は品質が高い」「当社は安い」みたいな抽象的なステートメントで止まるパターン。これでは判断軸として機能しません。「○○な悩みを持つ△△業界の人にとって、当社のサービスは××という独自手法で結果が出る点で他と違う」、ここまで具体化して初めてPositioningが機能します。
ステージ4:STPを商品設計・発信戦略に接続する
3段階で作ったSTPを、実務に接続します。Targetingで選んだセグメントの顧客課題を解決する商品設計、Positioningで設計した認識を伝える発信メッセージ、こういう形でSTPを商品とコミュニケーションに落とし込みます。STPが実務と接続されていない事業者が、業界では7〜8割を占めます。
接続の標準的な作業は、(1)LPのファーストビューでPositioningステートメントを表現、(2)商品ページの特長セクションでTargeting根拠を明示、(3)SNS発信のテーマをセグメント関心と連動、(4)価格設定をセグメントの支払能力と整合、(5)営業トークでPositioningを反復、こういう5つの実装プロセスです。STPは紙の上の分析ではなく、実務全体の判断軸として運用されます。
ステージ5:3〜6ヶ月ごとにSTPを見直す継続運用
STPを一度作って終わりではなく、3〜6ヶ月ごとに見直して更新します。市場環境の変化、顧客ニーズの移り変わり、競合の動向、自社の強みの進化、こういう外部・内部の変化を反映してSTPを最新化する継続プロセスが業界の標準です。STPを生きたフレームワークとして運用することで、商品設計と発信戦略の精度を維持します。
見直しの標準的な作業は、(1)アクセス解析・購買データからセグメント実態を再確認、(2)Targetingの優先順位を再評価、(3)Positioningの差別化が機能しているか競合観察、(4)商品設計と発信メッセージの整合性チェック、こういう4項目のレビューです。継続運用ができている事業者は、3〜6ヶ月ごとにSTPが進化し、商品・発信の精度が右肩上がりに上昇します。
身近な話で全体像をつかむ
ちょっと身近な話で、全体像を掴み直しましょう。
料理を出すレストランを開業する場面に置き換えてみます。あなたが新しい飲食店を出そうとしている、と仮定します。さて、最初に決めることは何でしょうか。
多くの人が「当社の強みはイタリアン料理だから、イタリアンレストランにしよう」と考えがちです。これがPositioningから入る発想。でも、この順番だと「そのイタリアン料理は、誰に向けて出すのか」が抜け落ちて、お店の作り・価格帯・立地、すべての判断が空中分解します。
STPの順番で考えると、まずSegmentationから始めます。「飲食店市場にはどんな顧客層がいるか」を全体把握します。(1)ファミリー層(週末ランチ需要)、(2)ビジネスマン層(平日ランチ・接待需要)、(3)若年層(SNS映え重視)、(4)グルメ志向層(質重視・価格気にしない)、(5)シニア層(健康志向)。市場全体の地図がここで描けます。
次にTargeting。5セグメントの中から、自社が戦う場所を選びます。立地が住宅街でファミリー需要が強いなら(1)、繁華街でビジネスマン需要が強いなら(2)、自社のシェフがSNS発信が得意なら(3)、こういう判断軸でTargetingを絞り込みます。仮にここで(4)グルメ志向層を選んだとしましょう。
最後にPositioning。「グルメ志向層にとって、当店のイタリアンは××という点で他と違う」を設計します。例えば「素材の鮮度に妥協しない、本日仕入れの食材だけを使う、月替わりのコース料理が看板」みたいな認識戦略です。ここで初めて、メニュー設計・価格設定・お店の内装・SNS発信内容、すべての判断軸が定まります。
これがSTPの順番の必然性。Segmentationで市場の地図、Targetingで戦う場所、Positioningで認識戦略、この順番でしか商品設計と発信戦略の判断軸は作れません。逆順や省略でやろうとすると、必ずどこかで判断が止まります。
STP分析の3段階で決める判断軸
STP分析の3段階それぞれで、決めるべき判断軸があります。各段階の判断軸を全部埋めて初めて、STPが実務に接続される設計になります。途中の判断軸を空欄のままにすると、STPは紙の上の分析で止まります。
段階1:Segmentation(セグメンテーション)で決める判断軸
市場を切り分ける軸を決めます。4種類の標準軸から、自社の事業に最も適した2〜3軸を選びます。(1)地理的変数(地域・都市規模・気候・文化圏)、(2)人口統計的変数(年齢・性別・職業・所得・家族構成)、(3)心理的変数(ライフスタイル・価値観・性格・関心領域)、(4)行動変数(購買頻度・利用シーン・ブランド忠誠度・チャネル選好)。
BtoC事業なら(2)人口統計的変数と(3)心理的変数の組み合わせが標準。BtoB事業なら(1)地理的変数と(4)行動変数に加えて、業界・企業規模・意思決定者の役職、こういう独自軸が入ります。事業性質に応じて軸の組み合わせを決めるのが、Segmentation設計の核心です。
段階2:Targeting(ターゲティング)で決める判断軸
Segmentationで作った3〜5セグメントの中から、戦う場所を選ぶ評価軸を決めます。5つの標準評価軸があります。(1)市場規模(セグメント内の潜在顧客数)、(2)成長性(セグメントが拡大しているか)、(3)競合状況(セグメント内の競合密度)、(4)自社強みとの適合度(自社の独自能力が活きるか)、(5)収益性(セグメントの支払能力)。
5軸それぞれを5段階評価で点数化し、合計点が最も高いセグメントを選びます。点数化することで、感覚的な選択ではなく、データと事実に基づく意思決定ができます。Targetingは「捨てる勇気」の作業なので、点数化なしで進めると、絞り込みができずに3〜4セグメントを同時に狙ってしまう失敗が起きます。
段階3:Positioning(ポジショニング)で決める判断軸
Targetingで選んだセグメントの顧客に、自社をどう認識させたいかを言語化する判断軸を決めます。ポジショニングステートメントの構造は4要素。(1)誰に向けて(Targetingで選んだセグメント)、(2)何を提供して(自社の商品・サービス)、(3)どんな独自性で(差別化要素)、(4)どんな結果を出すか(顧客が得る価値)。
4要素を1文に圧縮した例:「コンテンツビジネス初心者の30〜40代起業家にとって、明鏡試遂®は1on1サポートで設計図ごと作る点で他と違い、6ヶ月で売上の柱が立ち上がる」。こういう4要素を全部含んだ1文がポジショニングステートメントの完成形です。1要素でも欠けると、認識戦略として機能しません。
3段階の判断軸を全部埋めて初めてSTPが完成する
S・T・Pの3段階それぞれで、上記の判断軸を全部埋めることで初めてSTPが完成します。Segmentationで2〜3軸、Targetingで5評価軸、Positioningで4要素ステートメント、合計11個の判断軸を埋める作業です。これを全部埋めるのに、初めての事業者なら2〜3週間、慣れた事業者でも数日かかります。
判断軸を埋める作業の中で、商品設計の方向性・発信メッセージの軸・価格設定の根拠・営業トークの構造、こういう実務の判断基準が連鎖的に決まっていきます。STP分析は分析作業ではなく、事業の判断軸を整える整備作業として捉えるのが、業界の標準的な使い方です。
STP分析が機能しない典型3パターン
当社でクライアント相談を受けてきた中で、STP分析が機能しないパターンはほぼこの3つに集約されます。
もっとも多い失敗。「当社の強みは○○だから、こういうポジションで売ろう」とPositioningを先に決めてしまい、後からSegmentationとTargetingを逆算で組み立てるパターン。一見スムーズに見えますが、Positioningが「自社の都合」で決まっているため、顧客起点になっていません。
本来は、Segmentationで市場全体を把握し、Targetingで顧客の課題と支払能力を確認し、その上でPositioningを設計します。順番を守ることで、「顧客にとって意味のある独自性」が言語化されます。順番を崩すと、「自社が言いたいこと」と「顧客が聞きたいこと」がズレた状態でPositioningが固定されます。
「機会損失したくない」「全セグメントから売上を取りたい」という気持ちで、Targetingで3〜5セグメントを同時に狙ってしまうパターン。結果、商品設計が分散して、どのセグメントの顧客にも刺さらない「中途半端な商品」が完成します。
本来は、5評価軸で点数化して、合計点が最も高い1〜2セグメントに絞り込みます。Targetingは「選ぶ作業」ではなく「捨てる作業」が本質。捨てたセグメントを未来永劫狙わないわけではなく、現在のフェーズで集中するセグメントを1〜2個に絞り込む判断です。事業が成熟したら2nd Targetingで他セグメントに展開する設計が業界標準。
「当社は品質が高い」「当社は顧客サービスが手厚い」「当社は価格が安い」、こういう抽象的なPositioningで止まってしまうパターン。これでは商品設計・発信メッセージ・営業トーク、どの判断軸にも接続されません。
本来は、ポジショニングステートメントを4要素(誰に向けて・何を提供して・どんな独自性で・どんな結果を出すか)で具体化します。「コンテンツビジネス初心者の30〜40代起業家にとって、明鏡試遂®は1on1サポートで設計図ごと作る点で他と違い、6ヶ月で売上の柱が立ち上がる」、ここまで具体化して初めて、LPのファーストビュー・商品ページ・発信メッセージ、すべての実務の判断軸として機能します。
当社で8年運用してわかった本音
当社でSTP分析を8年間運用してきて、見えてきた本音をお伝えします。自社の商品設計とクライアント案件の両方で何度も回してきた中で、最初の数年では気づかなかった本質的なポイントが3つあります。
本音1:STPは「分析」より「言語化」が9割
当社でSTPを回し続けてきて一番強く感じるのは、STP分析の価値は「分析」ではなく「言語化」にあるという事実です。市場を切り分けて、ターゲットを選んで、ポジションを決める、この作業自体は数時間でできます。ただし「3段階の判断を1文・1表に圧縮して、社内全員が同じ言葉で語れる状態」、ここまで言語化するのが本質。
分析だけで止まっている事業者は、社員ごとに「当社のターゲットは○○」の認識がズレています。営業担当者は若年層を想定、マーケ担当者はシニア層を想定、商品開発はビジネスマンを想定、こういう認識ズレが頻発します。言語化までやり切ると、社内の判断軸が統一されて、商品・発信・営業のすべての精度が一段階上がります。
本音2:STPは商品設計より「捨てる商品」を決める判断に効く
当社で運用してきて意外だったのが、STPの最大の価値は「作る商品」を決めることではなく「捨てる商品」を決めることにある、という発見です。Targetingで1〜2セグメントに絞り込むと、そのセグメント以外の顧客のための商品開発・サービス追加要望、こういうものが大量に発生します。それを全部捨てる判断ができるのが、STPの真の威力です。
「機会損失したくない」という気持ちで全方位に対応すると、商品ラインナップが膨らみ、メンバーの工数が分散し、結局どのセグメントにも中途半端な状態になります。STPで「当社はこの1〜2セグメントだけを徹底的に深掘りする」と決めると、捨てる判断が即座にできるようになります。事業の集中度が上がる効果が、商品設計効果より大きいです。
本音3:Positioningは「言葉」より「行動」で証明される
これは当社でPositioningを何度も書き直してきた中で気づいた本音ですが、ポジショニングステートメントは「文字で書く」より「日々の行動で証明する」ことのほうが10倍重要です。「1on1サポートで設計図ごと作る」とステートメントに書いても、実際の1on1サポートの中身が浅ければ、Positioningは絵に描いた餅で終わります。
具体的には、ポジショニングステートメントに書いた独自性を、商品の中身・サポートの質・発信内容・営業トーク、こういう接点全部で再現することが必要です。例えば「設計図ごと作る」とPositioningに書いたなら、1on1サポートで毎回必ず設計図を一緒に作る、商品ページでも設計図サンプルを公開する、発信でも設計図の事例を継続的に出す、こういう日々の行動で証明し続けます。
もう1つ重要なのが、Positioningは3〜6ヶ月ごとに「行動できているか」を点検する作業です。書いた当初は意識していても、半年経つと現場の運用が徐々にPositioningからズレていきます。ステートメントと行動のズレを定期点検することで、Positioningを生きた判断軸として維持できます。書いて終わりではなく、行動で証明し続けるフレームワークです。
当社で8年間STPを回し続けてきた中で、最も成果が出たのは「Positioningを書き直す瞬間」ではなく「Positioningと行動のズレを発見して直す瞬間」でした。STP分析は紙の上の分析ではなく、日々の運用に組み込まれた継続プロセスとして機能した時に、初めて事業成長に直結します。
今日から使えるSTP設計5ステップ
ここまで読んでくださった方、お疲れさまです。今日から自分の事業でSTP設計を始めるための、5ステップを置いておきます。
自社の事業領域の市場全体を、地理・人口統計・心理・行動の4軸から2〜3軸を選んで切り分けます。セグメント数は3〜5個が標準。これより細かいと選択肢が爆発、これより荒いと意味のある差が出ません。紙またはスプレッドシートで全セグメントを並列に書き出します。
STEP1で作った3〜5セグメントを、市場規模・成長性・競合状況・自社強み適合度・収益性の5軸で5段階評価します。合計点が最も高い1〜2セグメントに絞り込み、それ以外は意識的に捨てます。「捨てる勇気」がTargetingの核心です。
「誰に向けて・何を提供して・どんな独自性で・どんな結果を出すか」の4要素を、1文に圧縮します。抽象表現は避けて、具体的な顧客像・具体的な独自手法・具体的な結果指標、ここまで具体化します。書いた1文を社内で共有し、全員が同じ言葉で語れる状態にします。
作ったSTPを、実務全体に展開します。LPのファーストビューでPositioningステートメントを表現、商品ページの特長セクションでTargeting根拠を明示、SNS発信のテーマをセグメント関心と連動、価格設定をセグメントの支払能力と整合、営業トークでPositioningを反復します。実装まで含めて初めてSTPが機能します。
STPを一度作って終わりではなく、3〜6ヶ月ごとに見直します。アクセス解析・購買データからセグメント実態を再確認、Targetingの優先順位を再評価、Positioningの差別化が機能しているか競合観察、こういう継続レビューでSTPを生きた判断軸として維持します。継続運用ができている事業者は、3〜6ヶ月ごとに精度が上がります。
シンプルですが機能するSTP設計の骨格が、この5ステップで完成します。最初は仮説でも構わないので、まずは3段階を全部通して書き出すことが最重要です。書き出すことで、商品・発信・営業の判断軸が連鎖的に整理されていきます。
- セグメンテーション
- 市場をいくつかの軸で切り分けて全体像を把握するSTPの第1段階。地理・人口統計・心理・行動の4軸が標準。
- ターゲティング
- Segmentationで作ったセグメントの中から、自社が戦う場所を選ぶSTPの第2段階。市場規模・成長性・競合・自社強み・収益性の5軸で評価。
- ポジショニング
- Targetingで選んだセグメントの顧客にどう認識されたいかを設計するSTPの第3段階。4要素ステートメントで言語化する。
- ペルソナ
- Targetingで選んだセグメントを、1人の具体的な人物像として描いたもの。年齢・職業・課題・価値観などを詳細に設定する。
- 4P分析
- STPの次の段階で実施するマーケティングミックス分析。Product・Price・Place・Promotionの4要素で実行戦略を設計する。
よくある質問(FAQ)
- STP分析と4P分析の違いは?
-
STP分析は「誰に何を提供するかの方針を決める」段階、4P分析は「決めた方針を実行する具体策を設計する」段階です。STP→4Pの順番で実施します。STPが上位概念で、4Pが下位の実行戦略という位置づけです。STPなしで4Pを組むと、実行戦略がブレます。
- セグメンテーションでセグメント数は何個が適切?
-
業界の体感では3〜5個が標準。これより細かい(10個以上)と選択肢が爆発してTargetingで判断が止まり、これより荒い(1〜2個)と意味のある差が出ません。3〜5個の粒度で市場全体を網羅するのが運用上のスイートスポットです。
- Targetingで複数セグメントを狙うのはアリ?
-
業界の標準は1〜2セグメントに絞り込みます。3個以上を同時に狙うと商品設計が分散して、どのセグメントにも中途半端な状態になります。事業が成熟したら、2nd Targetingで他セグメントに展開する設計が標準です。最初は必ず絞り込みます。
- ポジショニングステートメントの良い書き方は?
-
4要素を1文に圧縮するのが標準。「○○な悩みを持つ△△業界の人にとって、当社の××は◇◇という独自手法で結果が出る点で他と違う」、こういう構造です。抽象表現(品質が高い・サービスが手厚い)は避けて、具体的な顧客像と具体的な独自性で記述します。
- STP分析の各段階の所要時間と更新頻度は?
-
業界で語られる目安は以下です。
段階 初回所要時間 更新頻度 Segmentation 1〜2週間 年1回 Targeting 3〜5日 6ヶ月ごと Positioning 1〜2週間 3〜6ヶ月ごと 実装(LP・発信) 2〜4週間 常時更新 初回で1〜2ヶ月、その後は継続的に見直しながら運用します。
まとめ
では、結局STP分析とは、こういうことです。
- STP分析の核心は「市場を分ける作業」ではなく「Segmentation→Targeting→Positioningの3段階意思決定プロセス」
- 本質は分析ではなく、商品設計・発信・営業の判断軸を3段階で言語化すること
- 順番を守り、絞り込み、4要素ステートメントで具体化、その上で実務に接続して継続運用する
市場を切り分けて狙いを定めるのが目的なのではなく、商品設計と発信戦略の判断軸を3段階で言語化すること。これがSTP分析の本来の役割です。検討しているなら、まずはSegmentationで市場全体を3〜5個に切り分けるところから始めてみてください。
