「MRR」って、なんとなく「月次の売上」みたいに思ってませんか?
株式会社Cameen 西村温裕ことおんゆーです。
- MRRの本当の正体は「月次売上」ではなく「毎月確実に積み上がる経常収益」だということ
- New MRR / Expansion MRR / Churn MRR の構造を分解して見るのが正解
- MRRが伸びない典型3パターン
- うちの自社+クライアント案件100本超でわかったMRR運用の本音
- 今日から使えるMRR管理5ステップ
で、SaaS指標の話になると「MRRが大事」「MRRを伸ばせ」と。いやちょっと待ってください。そもそもMRRって、何を測ってるんですか?
なんとなくのイメージはあると思います。毎月の売上でしょう?と。でも「で、MRRが伸びない時、どこを直せばいいですか?」と聞かれると、意外と詰まる。
これ、自分だけだと思ってませんか?サブスク事業者・経営者・投資家視点でも「MRRを上げろ」までは言うけど、どう分解して見るかまでは語られない。話を深掘りしていくと、ほぼ全員が「MRR=売上の合計」で止まっているんですよね。
うちの事業で自社+クライアント案件含め100本超の継続課金事業をモニタリングしてきて、MRRを合計でしか見てないから打ち手が出ないパターンを本当に何度も見てきた。共通パターンとして「分解してないから、どこに手を打てばいいか分からない」という失敗が見えてきたんです。
今回はその今さら聞けない『MRRの正体』を、表面的な「月次売上指標」みたいな解説ではなく、構造の核心と分解の正解まで一気に深掘りしていきます。
結論:MRRの核心は「合計売上」ではない
MRRの正体は「Monthly Recurring Revenue(月次経常収益)」つまり毎月確実に積み上がる予測可能な売上。一時的な売上は含まない。これを4要素に分解して見るのが正解です。
「先月の売上トータル」とMRRは違います。MRRは「来月も再来月もこの金額が入る予測値」。だから一時収益・スポット案件はMRRに含めません。
なぜ「MRR」なのか
もう少し深く掘ります。なぜMRRがそこまで重要なのか。理由は3つあります。
1つ目は事業の予測可能性。MRRが100万円なら、来月も100万円が確実に積み上がる。これがあれば人件費・広告費・投資の計画が立つ。
2つ目は投資判断の根拠。VCはMRR成長率を見て評価する。「年間2倍成長」とは「MRR月次成長率6%」のこと。
3つ目は事業健全性の早期警戒。MRRを4分解(New/Expansion/Contraction/Churn)すれば、どこで問題が起きているかが先回りで分かる。
各構成要素の頭の中で何が起きているか
New MRR(新規)
新規契約から発生するMRR。マーケ・営業の指標。
Expansion MRR(拡張)
既存顧客のアップグレード・席数増等から発生するMRR。カスタマーサクセスの指標。
Contraction MRR(縮小)
既存顧客のダウングレード・席数減等で減るMRR。顧客満足度の指標。
Churn MRR(解約)
解約で消えるMRR。プロダクト・CSの両方の指標。
Net New MRR(純増)
New + Expansion – Contraction – Churn。この純増額が事業成長の真実。
身近な話で全体像をつかむ
ちょっと身近な話で、全体像を掴み直しましょう。
例えば、お風呂の浴槽のことを思い浮かべてください。お湯を満タンにしたい。蛇口から水を入れながら、栓が緩くて水も漏れている。
蛇口から入る水(New MRR)、お湯を熱くするためにさらに水を入れる(Expansion MRR)、温度を下げるために水を抜く(Contraction MRR)、栓の隙間から漏れる水(Churn MRR)。この4つの差し引きが、実際にお湯がどれくらい溜まるか(Net New MRR)。
蛇口を全開にしても、栓が大きく漏れていれば溜まらない。逆に蛇口がチョロチョロでも、栓がしっかりしていれば確実に溜まる。
これ、まんまMRRなんです。
多くの事業者は蛇口(新規獲得)ばかり気にして、栓(解約)を見ない。MRRが伸びない原因の8割は「栓の漏れ」つまり解約率の高さなんですよね。
MRR運用の正解は『分解して見る』
MRR運用の正解は「合計値で一喜一憂する」のではなく「4要素に分解してボトルネックを特定する」。
New / Expansion / Contraction / Churn を毎月可視化する。
合計MRRより成長率の方が重要。月次5%以上が健全。
New少ない=マーケ問題、Expansion少ない=CS問題、Churn多い=プロダクト問題。
マーケ→New、CS→Expansion+Churn、プロダクト→Churn、と責任分担を明確化。
4分解の数値を見て、来月どこに集中投資するかを決定する。
MRRが『伸びない』典型パターン3つ
MRRトータルだけ追う。中身が分かってないので打ち手が出ない。
蛇口(New)を強くするためにマーケ費を増やす。でも栓(Churn)が大きいので穴の空いたバケツ。
既存顧客からのアップセル機会を作らない。SaaSの利益の半分以上はExpansionから生まれるのに、ここを設計しないと一生スケールしない。
うちの自社+クライアント案件100本超で運用してわかった本音
本音1: 解約防止がMRR成長の最強レバー。新規を1.5倍にするより、解約を半分にする方が、長期MRRには10倍効く。
本音2: Expansion設計がない事業はスケールしない。月額単価固定だと、顧客が増えても利益率が上がらない。アップセル・上位プラン・追加席を設計しないと事業の壁にぶつかる。
うちで継続課金事業を運営していた時、最初は新規獲得に全リソースを投入していた。MRRは伸びるけど解約も多い「ザル状態」。180度方針転換して、新規予算を半分に削ってCS・プロダクト改善に振ったら、Churnが3分の1になりNet New MRRが2倍になったんですよね。
今日から使える管理ステップ5つ
New / Expansion / Contraction / Churn を毎月記録する。
(今月Net New MRR ÷ 先月MRR) × 100。月次5%が目標。
4要素のうち最も弱いところに来月の投資を集中。
マーケ・CS・プロダクトの責任範囲を明確化する。
分解数値を見て、来月の打ち手を決める会議を月初に固定する。
- ARR(年間経常収益)
- MRR × 12。年間ベースの予測収益。
- Churn(解約率)
- MRRが消える割合。低いほど健全。
- NRR(売上継続率)
- 既存顧客の継続+拡張売上指標。100%超で事業が伸びる。
- CAC(顧客獲得コスト)
- 1顧客獲得にかかる費用。MRRとセットで見る。
- LTV(顧客生涯価値)
- 1顧客が生涯で支払う総額。MRR × 平均継続月数で算出。
よくある質問(FAQ)
- スポット売上はMRRに含めますか?
含めません。MRRは「繰り返し発生する」収益のみ。コンサル単発・初期費用・カスタマイズ料は別計上です。
- 年契約のMRR計算方法は?
年額を12で割ってMRRに計上します。120万/年契約ならMRR10万円。
- 健全なMRR成長率は?
シード期で月次10-20%、成長期で5-10%、安定期で3-5%が目安です。
- MRRとARRどっちを見ればいい?
事業運営はMRR(月次の早期警戒)、投資家報告はARR(年間ベース)で使い分けます。
- Churn率の目安は?
BtoBで月次1-3%、BtoCで月次5-7%以下が健全。10%超えると事業が成り立たない。
業界平均
指標 健全な水準 月次MRR成長率 5-10% 月次Churn率 1-5% NRR 110%以上
まとめ
で、結局MRRとは、こういうことです。
- 正体は「合計売上」ではなく「予測可能な経常収益」
- New / Expansion / Contraction / Churn の4分解で見る
- ボトルネックに投資集中、新規偏重を避ける
ではでは。
