MRR(月次経常収益)とは?8年運用してわかった『予測可能収益の正体』と分解の正解

「MRR」って、なんとなく「月次の売上」みたいに思ってませんか?

株式会社Cameen 西村温裕ことおんゆーです。

この記事でわかること
  • MRRの本当の正体は「月次売上」ではなく「毎月確実に積み上がる経常収益」だということ
  • New MRR / Expansion MRR / Churn MRR の構造を分解して見るのが正解
  • MRRが伸びない典型3パターン
  • うちの自社+クライアント案件100本超でわかったMRR運用の本音
  • 今日から使えるMRR管理5ステップ

で、SaaS指標の話になると「MRRが大事」「MRRを伸ばせ」と。いやちょっと待ってください。そもそもMRRって、何を測ってるんですか?

なんとなくのイメージはあると思います。毎月の売上でしょう?と。でも「で、MRRが伸びない時、どこを直せばいいですか?」と聞かれると、意外と詰まる。

これ、自分だけだと思ってませんか?サブスク事業者・経営者・投資家視点でも「MRRを上げろ」までは言うけど、どう分解して見るかまでは語られない。話を深掘りしていくと、ほぼ全員が「MRR=売上の合計」で止まっているんですよね。

うちの事業で自社+クライアント案件含め100本超の継続課金事業をモニタリングしてきて、MRRを合計でしか見てないから打ち手が出ないパターンを本当に何度も見てきた。共通パターンとして「分解してないから、どこに手を打てばいいか分からない」という失敗が見えてきたんです。

今回はその今さら聞けない『MRRの正体』を、表面的な「月次売上指標」みたいな解説ではなく、構造の核心と分解の正解まで一気に深掘りしていきます。

目次

結論:MRRの核心は「合計売上」ではない

結論

MRRの正体は「Monthly Recurring Revenue(月次経常収益)」つまり毎月確実に積み上がる予測可能な売上。一時的な売上は含まない。これを4要素に分解して見るのが正解です。

「先月の売上トータル」とMRRは違います。MRRは「来月も再来月もこの金額が入る予測値」。だから一時収益・スポット案件はMRRに含めません。

なぜ「MRR」なのか

もう少し深く掘ります。なぜMRRがそこまで重要なのか。理由は3つあります。

1つ目は事業の予測可能性。MRRが100万円なら、来月も100万円が確実に積み上がる。これがあれば人件費・広告費・投資の計画が立つ。

2つ目は投資判断の根拠。VCはMRR成長率を見て評価する。「年間2倍成長」とは「MRR月次成長率6%」のこと。

3つ目は事業健全性の早期警戒。MRRを4分解(New/Expansion/Contraction/Churn)すれば、どこで問題が起きているかが先回りで分かる。

各構成要素の頭の中で何が起きているか

New MRR(新規)

新規契約から発生するMRR。マーケ・営業の指標。

Expansion MRR(拡張)

既存顧客のアップグレード・席数増等から発生するMRR。カスタマーサクセスの指標。

Contraction MRR(縮小)

既存顧客のダウングレード・席数減等で減るMRR。顧客満足度の指標。

Churn MRR(解約)

解約で消えるMRR。プロダクト・CSの両方の指標。

Net New MRR(純増)

New + Expansion – Contraction – Churn。この純増額が事業成長の真実。

身近な話で全体像をつかむ

ちょっと身近な話で、全体像を掴み直しましょう。

例えば、お風呂の浴槽のことを思い浮かべてください。お湯を満タンにしたい。蛇口から水を入れながら、栓が緩くて水も漏れている。

蛇口から入る水(New MRR)、お湯を熱くするためにさらに水を入れる(Expansion MRR)、温度を下げるために水を抜く(Contraction MRR)、栓の隙間から漏れる水(Churn MRR)。この4つの差し引きが、実際にお湯がどれくらい溜まるか(Net New MRR)。

蛇口を全開にしても、栓が大きく漏れていれば溜まらない。逆に蛇口がチョロチョロでも、栓がしっかりしていれば確実に溜まる。

これ、まんまMRRなんです。

多くの事業者は蛇口(新規獲得)ばかり気にして、栓(解約)を見ない。MRRが伸びない原因の8割は「栓の漏れ」つまり解約率の高さなんですよね。

MRR運用の正解は『分解して見る』

結論

MRR運用の正解は「合計値で一喜一憂する」のではなく「4要素に分解してボトルネックを特定する」

STEP 1
MRRを4分解する仕組みを作る

New / Expansion / Contraction / Churn を毎月可視化する。

STEP 2
Net New MRR成長率を追う

合計MRRより成長率の方が重要。月次5%以上が健全。

STEP 3
ボトルネックを特定する

New少ない=マーケ問題、Expansion少ない=CS問題、Churn多い=プロダクト問題。

STEP 4
部署別KPIに分解する

マーケ→New、CS→Expansion+Churn、プロダクト→Churn、と責任分担を明確化。

STEP 5
月次レビューで打ち手を決める

4分解の数値を見て、来月どこに集中投資するかを決定する。

MRRが『伸びない』典型パターン3つ

パターン1: 合計値しか見ない型

MRRトータルだけ追う。中身が分かってないので打ち手が出ない。

パターン2: 新規ばかり追う型

蛇口(New)を強くするためにマーケ費を増やす。でも栓(Churn)が大きいので穴の空いたバケツ。

パターン3: Expansion無視型

既存顧客からのアップセル機会を作らない。SaaSの利益の半分以上はExpansionから生まれるのに、ここを設計しないと一生スケールしない。

うちの自社+クライアント案件100本超で運用してわかった本音

本音1: 解約防止がMRR成長の最強レバー。新規を1.5倍にするより、解約を半分にする方が、長期MRRには10倍効く。

本音2: Expansion設計がない事業はスケールしない。月額単価固定だと、顧客が増えても利益率が上がらない。アップセル・上位プラン・追加席を設計しないと事業の壁にぶつかる。

うちで継続課金事業を運営していた時、最初は新規獲得に全リソースを投入していた。MRRは伸びるけど解約も多い「ザル状態」。180度方針転換して、新規予算を半分に削ってCS・プロダクト改善に振ったら、Churnが3分の1になりNet New MRRが2倍になったんですよね。

今日から使える管理ステップ5つ

STEP 1
スプレッドシートで4分解を月次集計

New / Expansion / Contraction / Churn を毎月記録する。

STEP 2
Net New MRR成長率を計算

(今月Net New MRR ÷ 先月MRR) × 100。月次5%が目標。

STEP 3
ボトルネック特定

4要素のうち最も弱いところに来月の投資を集中。

STEP 4
部署別KPIに展開

マーケ・CS・プロダクトの責任範囲を明確化する。

STEP 5
月次MRRレビュー会議を定例化

分解数値を見て、来月の打ち手を決める会議を月初に固定する。

セットで知っておくべき関連用語
ARR(年間経常収益)
MRR × 12。年間ベースの予測収益。
Churn(解約率)
MRRが消える割合。低いほど健全。
NRR(売上継続率)
既存顧客の継続+拡張売上指標。100%超で事業が伸びる。
CAC(顧客獲得コスト)
1顧客獲得にかかる費用。MRRとセットで見る。
LTV(顧客生涯価値)
1顧客が生涯で支払う総額。MRR × 平均継続月数で算出。

よくある質問(FAQ)

スポット売上はMRRに含めますか?

含めません。MRRは「繰り返し発生する」収益のみ。コンサル単発・初期費用・カスタマイズ料は別計上です。

年契約のMRR計算方法は?

年額を12で割ってMRRに計上します。120万/年契約ならMRR10万円。

健全なMRR成長率は?

シード期で月次10-20%、成長期で5-10%、安定期で3-5%が目安です。

MRRとARRどっちを見ればいい?

事業運営はMRR(月次の早期警戒)、投資家報告はARR(年間ベース)で使い分けます。

Churn率の目安は?

BtoBで月次1-3%、BtoCで月次5-7%以下が健全。10%超えると事業が成り立たない。

業界平均

指標健全な水準
月次MRR成長率5-10%
月次Churn率1-5%
NRR110%以上

まとめ

で、結局MRRとは、こういうことです。

  1. 正体は「合計売上」ではなく「予測可能な経常収益」
  2. New / Expansion / Contraction / Churn の4分解で見る
  3. ボトルネックに投資集中、新規偏重を避ける

ではでは。

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この記事を書いた人

株式会社Cameen代表 西村温裕(Haruhiro)。2019年からコンテンツビジネスを8年運営。

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