HubSpotとは?8年運用してわかった『事業OS統合プラットフォームの正体』と運用の正解

HubSpot』って言葉、聞いたことはあっても、結局何ができるツールなのか説明できますか?

株式会社Cameenです。本記事は当社の運用知見をもとに解説します。

この記事でわかること
  • HubSpotは「CRMツール」ではなく「マーケ・営業・カスタマーサクセスを1つのデータで繋ぐ事業OS統合プラットフォーム」のこと
  • 本質は機能群ではなく「顧客データの単一管理」と「部門越境の業務連携」
  • HubSpotを構成する5つのHub(機能群)と、それぞれの責務
  • HubSpot導入で失敗する典型3パターン
  • 初期検討〜本格活用までの5ステップ運用設計

マーケティングオートメーション、営業支援、カスタマーサポート、こういう領域のSaaSを調べると、必ず最初に名前が挙がるのがHubSpotです。世界で20万社超が利用していて、日本でも導入企業がじわじわ増えています。では、「HubSpotって結局なんなの?」と聞かれて、明確に答えられる人は意外と少ない。

「CRMでしょ?」「MAツールでしょ?」「営業の管理ツールでしょ?」と、説明する人によって答えがバラバラです。これ全部正解で、全部不正解。なぜなら、HubSpotは1つの機能ではなく、5つの機能群が同じデータベースで繋がった「事業OSの統合プラットフォーム」だから。1つのカテゴリ名で表現できない設計が、HubSpotの本質です。

当社はMyASPを軸にメルマガとステップメールを8年運用してきて、HubSpotそのものを本格運用したことはないのです。でも、クライアント案件でHubSpot導入企業と関わったり、業界のSaaS事例を観察したりする中で、HubSpotが何を解決して、どこでつまずくのか、輪郭は見えてきました。今日はその観察から得た知見を共有します。

業界観察で繰り返し見えてきたのは、「HubSpotを単なるMA(マーケティングオートメーション)ツールとして導入して、機能の3割も使えていない企業が大半」という事実。月額数十万円払って、メール配信機能しか使っていないケースは本当に多い。これHubSpotの問題ではなく、「事業OS」として設計されたツールを、単機能ツールの発想で使っているから起きる構造的なミスマッチです。

今回はその「今さら聞けないHubSpot」を、業界一般の観察知見から、5つのHub構造と導入時の判断基準まで深掘りしていきます。読み終わる頃には、自社にHubSpotを導入すべきか、導入するならどのHubから始めるべきか、紙に書き出せるレベルになっているはずです。

目次

結論:HubSpotの核心は「CRMツール」ではなく「事業OSの統合プラットフォーム」

結論

HubSpotは、よく「CRMツール」や「MAツール」と説明されるんですが、これだとHubSpotの本質が完全に見えなくなります。本当の意味はもっと別のところにあります。

HubSpotの本当の正体は、「マーケティング・営業・カスタマーサクセス・コンテンツ管理・運用業務を、1つの顧客データベースで繋いだ事業OSの統合プラットフォーム」のことです。CRMもMAも営業支援も、すべてHubSpotという大きな枠組みの中の1機能にすぎません。

業界の体感として、HubSpotを「単なるメール配信ツール」として使うと、月額の3〜5割しか元が取れません。逆に「事業全体のOS」として使うと、マーケから営業、サポート、コンテンツ運用、すべての部門の業務がHubSpotの中で完結します。費用対効果が10倍以上変わるのは、この設計思想を理解しているかどうかで決まる構造です。

HubSpotには5つの主要Hub(機能群)があります。Marketing Hub(マーケ自動化)、Sales Hub(営業支援)、Service Hub(顧客サポート)、CMS Hub(Webサイト管理)、Operations Hub(データ連携・運用自動化)。この5つすべてが「同じ顧客データベース」で繋がっているのが最大の特徴です。だから「マーケが集めたリード情報を営業がそのまま使える」「営業の商談状況をカスタマーサクセスが引き継げる」、こういう部門越境の業務連携が標準で実現します。

HubSpotの真の価値は機能の豊富さではなく、「1つの顧客データを全部門で共有する仕組み」です。Salesforce・Marketo・Zendesk、こうしたツールを個別に導入してデータ連携に苦労するのとは、設計の根本が違います。お金を払って機能を買うのではなく、お金を払って「事業の部門間データ統合」を買うのがHubSpot導入の本質です。

なぜ「HubSpot」と名付けられたのか

もう少し深く掘ります。なぜこのツールは「HubSpot」と名付けられたのか。命名の背景を整理します。

「Hub」は英語で「中心・拠点」のこと。車輪の中心軸を意味する単語で、そこから「物事の中心」「ネットワークの結節点」という意味で使われるようになりました。HubSpotの設計思想は「顧客データを中心(Hub)に置き、すべての部門業務がそこから放射状に伸びる」、こういう構造を象徴しています。

HubSpotは2006年、米国MITのBrian HalliganとDharmesh Shahの2人によって創業されました。彼らが提唱した概念が「インバウンドマーケティング」。プッシュ型の押し売りマーケから、コンテンツで顧客を引き寄せるプル型マーケへの転換を、ツールと方法論の両輪で提案したのが原点です。

「Spot」のニュアンスは「特定の場所・拠点」。Hub+Spotで「すべての顧客接点が集まる中心拠点」という意味になります。当時は、マーケはMA、営業はCRM、サポートはヘルプデスクツール、すべて別々のSaaSで動かしていた時代。HubSpotは「全部1ヶ所に集める」という発想自体が革新的でした。

業界の体感として、HubSpotは2010年代に「中堅企業向けインバウンドマーケのデファクトスタンダード」として地位を確立。2014年にNYSE上場、現在は時価総額3兆円超のメガSaaSです。Salesforceが「営業中心の大企業向け」を押さえる中、HubSpotは「マーケ中心の中堅・成長企業」というセグメントを開拓してきました。

近年は、AI機能の統合(Breeze AIと呼ばれる独自AI)、Operations Hubの拡張、業界別ソリューション、こういう方向で進化が続いています。単なるCRM+MAから、「事業の全部門を統合する真のOSプラットフォーム」へ脱皮しつつあるのが、現在のHubSpotです。

日本市場でも2016年頃から本格進出し、現在は数千社規模での導入が進んでいます。Salesforceに比べてUIが直感的、無料CRMから始められる、こういう特徴で日本のスタートアップ・中堅企業に支持されている状況です。

HubSpotの現場で何が起きているか

HubSpot導入企業の現場で、具体的に何が起きているか。5段階で整理します。

段階1:無料CRMからの導入開始

HubSpotは無料CRMから始められるのが最大の入口設計。連絡先・企業情報・商談管理、こういう基本機能を完全無料で使えます。クレジットカード登録すら不要なので、まず無料で試して、必要に応じて有料Hubを追加するパターンが標準です。

業界の現場では、まず営業部門が無料CRMを使い始めて、効果を確認してからMarketing Hubの有料プランを追加、というステップを踏む企業が多い。一気に全Hub導入するのではなく、段階的に拡張する設計が標準的なフローです。

段階2:Marketing Hubでリード獲得自動化

Marketing Hubを導入すると、ランディングページ作成・フォーム埋め込み・メール配信・スコアリング・ワークフロー自動化、こういう機能群が使えるようになります。月額数万円〜数十万円、機能の幅と連絡先数で価格が変動します。

この段階で重要なのは「ワークフロー設計」です。資料DLしたリードに自動でフォローアップメールを送る、特定の行動を取ったリードに営業を割り当てる、こういう自動化シナリオをHubSpot上で構築します。設計次第で生産性が大きく変わる段階です。

段階3:Sales Hubで商談管理を統合

Sales Hubを追加すると、商談パイプライン管理・メール追跡・シーケンス自動送信・電話統合・見積書作成、こういう営業業務がHubSpot内で完結します。Marketing Hubで獲得したリードを、そのままSales Hubの商談に変換できるのが最大の利点です。

営業マネージャーが商談状況を可視化できる「ダッシュボード」機能も標準で備わっています。誰がどのフェーズの商談を何件持っているか、見込み売上はいくらか、ボトルネックはどこか、すべてリアルタイムで確認可能。営業マネジメントの作業負荷が大きく下がります。

段階4:Service Hubで顧客サクセスを連携

Service Hubを導入すると、チケット管理・ナレッジベース・チャットボット・カスタマーフィードバック調査、こういう顧客サポート機能が使えます。営業が獲得した顧客の情報がそのままService Hubで使えるので、引き継ぎロスがゼロになります。

顧客の問い合わせ履歴・解約リスク・サポート満足度、すべてが同じHubSpot内で管理されるため、営業とカスタマーサクセスの連携密度が大きく上がります。「契約した瞬間に営業との情報が切れる」という従来のSaaS分断問題が解消される段階です。

段階5:CMS Hub+Operations Hubで全社統合

CMS HubでWebサイト・ブログ・ナレッジサイトを統合管理、Operations Hubで外部SaaSとのデータ連携・自動化を実装。ここまで来ると、マーケから営業、サポート、コンテンツ運用まで、すべての業務がHubSpot1つで動く状態になります。

この段階に到達した企業は、HubSpotを「単なるSaaS」ではなく「事業の中枢システム」として位置付けます。月額費用は数十万〜数百万円規模になりますが、それでも個別SaaSを5つ契約するより安く、データ統合の手間がゼロになる費用対効果が圧倒的です。

身近な話で全体像をつかむ

ちょっと身近な話で、全体像を掴み直しましょう。

家の建築に置き換えてみます。あなたがマイホームを建てる時、選択肢は2つあります。(1)設計事務所・大工・電気工事・水道工事・内装工事、それぞれ別の業者に発注して個別に管理する、(2)1社のハウスメーカーが全工程を一括管理する。前者は安く済むこともあるが、業者間の連携トラブルが多発、後者は高めだが品質と連携が保証される。

これ、企業のSaaS導入と全く同じ構造です。Salesforce(営業)+Marketo(MA)+Zendesk(サポート)+WordPress(CMS)、こう個別ツールを揃えるのが前者。HubSpot1つですべて統合するのが後者です。前者は機能の自由度は高いが、データ連携・部門間連携で常にトラブルが起きる。後者は1つのプラットフォームで完結するので、連携問題が原理的に発生しない。

家の建築の場合、ハウスメーカーを選ぶ判断軸は「予算」「デザインの自由度」「アフターサポート」「将来のリフォーム対応」、こういう要素です。SaaS選定も同じで、HubSpotを選ぶか個別SaaS集合体を選ぶかは、「予算」「カスタマイズの必要度」「部門間連携の重要度」「将来の拡張余地」で判断します。

HubSpotが向くのは、「中堅企業で部門間連携を重視する」「予算より連携品質を優先する」「将来のスケール拡張を見据える」、こういう判断軸を持つ会社です。逆に、「大企業で各部門が高度なカスタマイズを必要とする」「営業特化で他部門との連携優先度が低い」、こういう会社にはSalesforce中心の個別SaaS構成のほうが合います。

業界の例として、年商10億〜100億円規模の中堅SaaS企業がHubSpotを採用する事例が増えています。スタートアップから成長フェーズに入った会社で、「営業10名、マーケ3名、CS5名」、こういう規模になると個別SaaS連携の負担が膨大になり、HubSpotへの一本化で生産性が大きく上がる構造です。

逆に、年商1,000億円超の大企業で営業が100名超いるような会社は、Salesforce中心の構成のほうが現実的なケースが多い。HubSpotの統合性 vs Salesforceの拡張性、これが業界の二大潮流です。

事業OS統合プラットフォームの5要件で見るHubSpot

5要件すべてを満たすかが評価軸

HubSpotを「事業OSの統合プラットフォーム」として評価する場合、5つの要件で判定します。この5要件をすべて満たすツールは、業界全体でも限られています。HubSpotの本当の強みはこの5要件への対応力です。

要件1:単一の顧客データベース

マーケ・営業・サポート、すべての部門が同じ顧客レコードを参照する設計。HubSpotではContact(連絡先)・Company(企業)・Deal(商談)・Ticket(サポート)が共通データモデルで繋がっています。Marketing Hubで取得したリードがそのままSales Hubで商談化、Service Hubで顧客対応、すべて1つのレコードで追跡可能。

業界の体感として、これが個別SaaS構成では絶対に再現できない領域です。Salesforce+Marketo+Zendesk構成でデータ連携を実装すると、整合性維持に専任エンジニアが必要になります。HubSpotは設計時点でこの問題が存在しない構造です。

要件2:部門越境のワークフロー

マーケが獲得したリードを営業に自動アサイン、営業が成約した顧客をカスタマーサクセスに自動引き継ぎ、解約リスクの高い顧客を自動でフラグ付け、こういう部門越境の業務フローを設計できる要件。HubSpotのWorkflow機能は、Marketing・Sales・Serviceの境界を自由に跨ぐ自動化が可能です。

業界観察では、ここで挫折する企業が多い。ツールは導入したが、ワークフロー設計を業務に落とし込めず、結局メール配信だけに使っている、というパターンです。HubSpotの真の価値はワークフローにあるので、ここを使いこなせないと費用対効果が3割程度に留まります。

要件3:可視化されたパイプライン

顧客のジャーニー(認知→興味→検討→購入→継続)を、フェーズごとに可視化できる要件。HubSpotではマーケファネル・営業パイプライン・サポートチケット状況、すべてダッシュボードで一覧管理可能。経営層が事業全体の状況を1画面で把握できる設計です。

業界の体感として、可視化の品質はSalesforce以上だと評価されます。レポート作成の手軽さ、グラフのカスタマイズ性、ダッシュボードの構築速度、すべてHubSpotが直感的に作れる強みを持っています。

要件4:外部システム連携

HubSpot単体で完結しない領域は外部SaaSと連携する要件。Slack、Zoom、Google Workspace、Microsoft 365、Stripe、Shopify、Salesforce、こういう主要SaaSとの公式連携が1,000以上存在します。Operations Hubを使えばカスタムAPI連携も可能。

HubSpotだけで全業務をやろうとせず、特殊領域は外部SaaSで処理し、データだけHubSpotに集約する設計が業界の標準的な使い方です。「全部HubSpot」ではなく「中核はHubSpot、専門領域は外部」が現実解。

要件5:段階的な機能拡張

無料CRMから始めて、Marketing Hub→Sales Hub→Service Hub→CMS Hub→Operations Hub、と段階的にHubを追加できる要件。一気に全機能を契約する必要がなく、事業フェーズに応じて拡張していく設計が可能です。

業界の現場では、まず1Hubで効果を実感してから次のHubを追加、というステップを踏む企業が多い。年商規模に応じて、Starter→Professional→Enterpriseとプランをアップグレードできる柔軟性も、HubSpotが中堅企業に支持される理由です。

5要件をすべて満たすツールは業界全体でも限られていて、Salesforce+周辺SaaS構成、Zoho One、HubSpot、この3つが代表選択肢です。コストパフォーマンスと導入難易度のバランスでHubSpotが選ばれるのが、ここ数年の業界トレンド。

HubSpot導入で失敗する典型3パターン

業界事例を観察すると、HubSpot導入で失敗する典型パターンはこの3つに集約されます。

パターン1:単機能ツールとして使ってしまう

もっとも多い失敗。Marketing Hubを契約したものの、結局メール配信機能しか使わず、ワークフロー・スコアリング・ランディングページ作成・コンテンツ管理、すべて活用できていないパターン。月額数十万円払って、機能の2〜3割しか使えていない状態です。

本来は、HubSpot導入時に「自社のどの業務をHubSpotに統合するか」を設計図にしてから契約するのが正解。設計図なしで契約すると、結局メール配信ツールとしてだけ使い続ける構造になります。導入コンサル・社内推進担当者の配置が必須です。

パターン2:既存データの移行設計を軽視する

既存の顧客データ(Excel・別CRM・MA・サポートツール)をHubSpotに移行する作業を軽視して、データ品質の悪いままHubSpotを動かしてしまうパターン。重複レコード・データ項目の不整合・履歴の欠落、これらが残ったままだと、HubSpotの統合価値が成立しません。

本来は、データ移行フェーズで「データクレンジング+項目設計+履歴の保全」を並行して進めるのが標準。これを軽視すると、契約後3ヶ月でデータがカオス化して、結局移行前より使いづらい状態になります。データ移行は最低1〜2ヶ月の専任プロジェクト体制が必須です。

パターン3:部門ごとに別々のSaaSを並走させる

マーケはHubSpot、営業はSalesforce、サポートはZendesk、こういう形でHubSpotを「マーケ部門専用ツール」として運用してしまうパターン。HubSpotの最大の価値である「部門越境のデータ統合」が消滅し、結局個別SaaSと同じ運用になります。

本来は、HubSpotを導入したら「全社の顧客データ統合プラットフォーム」として位置付け、営業・サポート・コンテンツ運用、すべての部門で使う体制を作るのが標準。部門の都合で別ツール並走を許すと、HubSpotを契約する意味がなくなります。経営層の強い意思決定が必須です。

業界観察で見えてきた3つの本音

当社はHubSpot本格運用していなくて、MyASP主軸でメルマガとステップメール8年運用してきた立場です。だからHubSpot利用の生の現場感は持っていません。でも、クライアント案件で導入企業と関わったり、業界のSaaS事例を観察したりする中で、見えてきた本音を共有します。

本音1:HubSpot vs Salesforceは「思想の選択」

業界の現場でよく語られるのが「HubSpotとSalesforce、どっちを選ぶか」という議論ですが、これ機能比較ではなく「事業の思想の選択」です。HubSpotは「マーケから入り、営業・サポートに繋ぐ」インバウンド志向、Salesforceは「営業を起点に、周辺を拡張する」アウトバウンド志向です。

業界の体感として、コンテンツマーケで顧客を引き寄せる戦略の会社はHubSpotが合う、人的営業の組織力で勝負する会社はSalesforceが合う、こういう住み分けが見えてきます。機能の優劣ではなく、自社の事業戦略がインバウンド型かアウトバウンド型かで、自然と最適解が決まる構造です。

本音2:無料CRMの罠

HubSpotの最大の集客装置は「無料CRMから始められる」設計ですが、これが落とし穴にもなっています。無料で使い始めて「これでいいや」となり、有料Hubに移行しないまま、結果HubSpotの本来の価値である統合機能が活かせない、というパターンが業界観察で頻繁に見られます。

無料CRMは「事業OS統合プラットフォーム」全体の入口にすぎないので、ここで止まるとHubSpotを選んだ意味がほぼ消えます。「無料で試して合うかどうか判断」のフェーズと、「本格導入で全社の業務基盤にする」のフェーズを明確に分けて考える視点が、業界の現場で重要視されています。

本音3:日本市場では「導入支援パートナー」の質が決定的

これ業界の現場で経営コンサルやSaaS導入支援している人達がよく語る本音ですが、日本でHubSpotを成功させる鍵は「導入支援パートナー」の質に直結する、という事実があります。HubSpot本社は米国で、日本独自の商習慣・税制・契約形態に完全対応しているわけではないので、現地化のノウハウを持つ国内パートナーが必須です。

業界の体感として、HubSpotの認定パートナーは日本で数百社存在しますが、本当に「事業OS統合プラットフォーム」として使いこなすコンサル力を持つパートナーは限られています。「ツール操作を教えてくれるパートナー」と「業務設計からアドバイスできるパートナー」、ここで質が大きく分かれます。

パートナー選定で見るべき指標は5つ。(1)過去の導入実績数、(2)同業界・同規模の事例有無、(3)業務設計コンサルの提供範囲、(4)導入後の継続サポート体制、(5)社内の認定資格保有者数。この5指標で評価すれば、「ツール販売だけのパートナー」と「事業価値を引き出せるパートナー」が選別できます。

もう一つ業界で語られる本音が、「HubSpot導入の本当のコストは月額ではなく社内推進工数」という事実。月額の3〜5倍規模の社内人件費がHubSpot運用に投下されるのが現実です。導入推進担当者を1〜2名専任化できない会社は、契約しても活用が進みません。費用対効果計算で月額だけ見ると、実態を大きく見誤ります。

初期検討から本格運用までのSTEP

ここまで読んでくださった方、お疲れさまです。HubSpot導入の初期検討から本格運用までの全体像を5ステップで置いておきます。

STEP1
無料CRMで業務適合性を検証(0〜2ヶ月)

無料CRMにサインアップし、自社の顧客情報を少量(50〜100件)入力。UIの直感性・基本機能・既存業務との適合性を検証します。この段階で「合わない」と判断したら、Salesforce他のSaaSへ転換するのが合理的。

STEP2
業務設計図の作成(2〜3ヶ月目)

HubSpotで統合する業務領域を明確化。マーケのリード獲得フロー、営業の商談管理プロセス、サポートのチケット対応、すべて現状業務を可視化し、HubSpot上での再現方法を設計します。この設計図が運用品質の決定打。

STEP3
優先Hubを契約・初期設定(3〜5ヶ月目)

業務優先度の高いHub(多くはMarketing Hub or Sales Hub)を1つ契約し、初期設定を実施。データ移行・項目設計・パイプライン構築・ワークフロー実装、ここを2ヶ月かけて作り込みます。導入支援パートナーの活用が標準。

STEP4
追加Hub展開で部門統合(6〜12ヶ月目)

初期Hubの運用が安定したら、Service Hub・CMS Hub・Operations Hubを段階的に追加。部門越境のワークフローを構築し、全社の顧客データを1つのプラットフォームに統合していきます。本格的な事業OS化のフェーズ。

STEP5
継続改善で業務最適化(12ヶ月目以降)

ダッシュボードで業務状況を可視化し、ボトルネックを特定して継続改善。ワークフロー追加・カスタムレポート・AI機能活用、こういう要素で運用を磨き込みます。HubSpotは導入1年目より2〜3年目以降に真価を発揮するツールです。

HubSpot導入は短期プロジェクトではなく、12〜24ヶ月の中期プロジェクトです。最初の3ヶ月を雑にやると、その後すべてのフェーズで苦労します。設計フェーズへの時間投資が、長期成果を決める構造です。

セットで知っておくべき関連用語
CRM(Customer Relationship Management)
顧客との関係を管理するシステム・思想の総称。HubSpotの中核機能でもある。
MA(Marketing Automation)
マーケ業務の自動化ツール群。リード獲得・育成・スコアリング・配信を自動化する。
インバウンドマーケティング
コンテンツで顧客を引き寄せるプル型マーケ手法。HubSpot創業者が提唱した概念。
Salesforce
営業中心のCRMプラットフォーム。HubSpotの最大の競合かつ思想の異なる選択肢。
SaaS(Software as a Service)
クラウドで提供されるソフトウェアの形態。HubSpotはSaaSの代表例。

よくある質問(FAQ)

HubSpotの料金体系は?

無料CRMから始められ、Marketing/Sales/Service/CMS/Operations各HubがStarter(月数千円〜)、Professional(月数万円〜)、Enterprise(月十数万円〜)の3段階。連絡先数とHub数で総額が変動します。中堅企業の本格運用で月数十万円〜100万円超が業界の体感です。

HubSpotとSalesforceの違いは?

HubSpotは「マーケ起点で全部門を統合」する設計、Salesforceは「営業起点で周辺を拡張」する設計。UIの直感性・初期導入コスト・部門統合のしやすさはHubSpot優位、カスタマイズ性・大企業向け拡張性はSalesforce優位、というのが業界の標準的な比較認識です。

日本企業がHubSpot導入で気をつけることは?

業界で語られる注意点は4つ。(1)日本独自の商習慣との整合(印鑑・契約書ワークフロー)、(2)国内認定パートナーの活用、(3)社内推進担当者の専任化、(4)既存データ移行の入念な設計。米国製SaaSなので、日本ローカライズの労力を見積もるのが業界の標準です。

HubSpotが向く企業・向かない企業は?

業界の体感では、向くのは年商10億〜100億規模の中堅企業、インバウンドマーケ重視、部門統合を志向する会社。向かないのは年商1,000億超の大企業で高度カスタマイズが必要、営業100名超の大規模組織、こういう会社です。事業規模と戦略思想で選定するのが業界の標準。

HubSpot Hub別の役割比較は?

業界で語られる目安は以下です。

Hub主な機能典型導入順
Marketing Hubリード獲得・MA・配信1〜2番目
Sales Hub商談管理・営業支援1〜2番目
Service Hubサポート・CS3番目
CMS HubWebサイト管理4番目
Operations Hubデータ連携・運用自動化5番目

事業優先度と既存ツール状況に応じて順番を組みます。

まとめ

では、結局HubSpotとは、こういうことです。

  • HubSpotの核心は「CRMツール」ではなく「マーケ・営業・サポートを1つのデータで繋ぐ事業OS統合プラットフォーム」
  • 本質は機能の豊富さではなく、単一の顧客データベースで部門越境の業務連携を実現する設計思想
  • 5つのHub(Marketing/Sales/Service/CMS/Operations)を段階的に統合し、12〜24ヶ月かけて事業OS化していく

機能を買うのではなく、部門統合を買う。これがHubSpot導入の本来の意義です。検討しているなら、まず無料CRMから業務適合性を試してみてください。

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この記事を書いた人

株式会社Cameen代表 西村温裕(Haruhiro)。2019年からコンテンツビジネスを8年運営。

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