情報設計(IA)とは|ユーザーが『迷わず辿り着ける』情報構造の本質と設計の3原則

情報設計』って言葉、聞くだけで難しそうな響きしませんか?

株式会社Cameen 西村温裕ことおんゆーです。

この記事でわかること
  • 情報設計(IA)とは「サイトマップを作ること」ではなく「ユーザーが目的の情報に最短経路で迷わずたどり着ける構造を設計する技術」のこと
  • 本質はデザインではなく、ユーザーの頭の中の整理パターンに沿った構造化
  • 情報設計の3原則(階層の深さ・ナビゲーションの一貫性・検索可能性とブラウザビリティ)
  • 情報設計で失敗する典型3パターン
  • 明日から実践できる情報設計の5STEP

近年、Webサイト・アプリ・社内ポータル・ECサイト、こういうデジタルプロダクトを設計する場面で「情報設計」「IA(Information Architecture)」という言葉を耳にする機会が増えました。デザイナーが集まる勉強会、UX設計の専門書、ベンチャー企業の求人募集、いろんな場面でこの言葉が出てきます。

でも、いざ「情報設計って具体的に何をすること?」「サイトマップを作るのと何が違う?」「ワイヤーフレームを引くのと同じ?」と聞かれると、答えに詰まる方が多いんですよね。「サイトの構造を作ること」という認識で止まって、情報設計の本質的な役割まで理解している人は意外と少ない。これ、自分だけだと思ってませんか?

うちの事業でWebサイトとLP、ステップメールやコンテンツ配信プラットフォームを長年運用してきて、情報設計を後回しにしたサイトは必ず作り直しになるという現実を何度も体験してきました。最初は「とりあえずページを作ってから後で整える」と思っていたんですが、ページが増えれば増えるほど構造が崩れ、ユーザーが目的の情報にたどり着けなくなる。直帰率が上がり、コンバージョン率が下がり、結局ゼロから構造を組み直すことになるんです。

もう一つ繰り返し観察したのは、「情報設計は派手な仕事ではないが、サイト全体の成果を決定する最上流工程」だという事実。デザインの色や見栄えより、構造設計のほうがCVR・直帰率・滞在時間、すべての指標に強く効きます。1ページのデザインを磨くより、サイト全体の情報構造を整える方が10倍効果が高い場面が多いんです。

今回はその「今さら聞けない情報設計(IA)」を、表面的な解説ではなく、構造の核心と3原則・実践フローまで一気に深掘りしていきます。読み終わる頃には、自分のサイトの情報構造に何が足りていないかが、紙に書き出せるレベルになっているはずです。

目次

結論:情報設計の核心は「サイトマップ作り」ではなく「最短経路の構造設計」

結論

情報設計は、よく「サイトマップを作ること」と説明されるんですが、これだと情報設計の本質が見えません。本当の意味はもっと別のところにあります。

情報設計の本当の正体は、「ユーザーが目的の情報に最短経路で迷わずたどり着ける構造を設計する技術」のことです。単なるページの並べ方ではなく、ユーザーの頭の中の整理パターンに沿った形で、情報を分類・階層化・ラベル化する作業全体を指します。

業界の体感として、情報設計が機能しているサイトは、ユーザーが3クリック以内で目的のページに到達できます。逆に、情報設計が崩れているサイトは、5クリック以上スクロールしてもユーザーが目的の情報を見つけられず、結果として直帰率が高くなる。サイト全体のCVRが大きく変わってきます。

情報設計の対象範囲は、サイトマップだけではありません。ナビゲーション構造、カテゴリ分類、ラベル(メニュー名)の選定、検索機能の設計、パンくずリスト、関連リンク配置、すべて情報設計の領域です。「ユーザーがどう情報を探すか」を起点に、サイト全体の構造をデザインする上流工程と理解する必要があります。

情報設計の真の価値はサイトの美しさではなく、「ユーザーが迷わず目的を達成できる」という機能性。良い情報設計は、ユーザーがそれを意識しない、つまり「探す手間がない」と感じられる状態を作ります。逆に悪い情報設計は、ユーザーが「探すのが面倒」と感じてサイトを離れる原因になります。表に見えにくいが、サイト成果の根幹を決める領域です。

なぜ「Information Architecture」と名付けられたのか

もう少し深く掘ります。なぜこの分野は「Information Architecture(情報の建築学)」と名付けられたのか。命名の背景を整理します。

「Information Architecture」という言葉は、1976年にアメリカの建築家Richard Saul Wurman(リチャード・ソール・ワーマン)が提唱したのが起源です。ワーマンは建築家でありながら情報デザインの第一人者でもあり、「情報を建築物のように構造化して、人が迷わず歩けるようにする」という発想で、この言葉を世に広めました。

「アーキテクチャ(建築)」という言葉が使われている点が、情報設計の本質を表しています。建築では、人が建物に入ったときに自然に動ける動線設計、目的の部屋にたどり着ける階層構造、すべて事前に設計図で組まれます。情報設計も同じで、ユーザーがサイトに入ったときに自然に目的情報にたどり着ける構造を、設計図のレベルから組み立てる作業です。

1990年代後半、Web時代の到来とともに、Jesse James Garrett(ジェシー・ジェームズ・ガレット)が情報設計を含むユーザーエクスペリエンス全体を「UX要素の5段階モデル」として体系化しました。ストラテジー層・スコープ層・ストラクチャー層・スケルトン層・サーフェス層という5階層で、情報設計はストラクチャー層に位置づけられます。Web設計のフレームワークとして広く採用されています。

そして2002年、Peter Morville(ピーター・モービル)とLouis Rosenfeld(ルイス・ローゼンフェルド)が書籍『Information Architecture for the World Wide Web』(通称「シロクマ本」)を出版。Webにおける情報設計の決定版として、世界中のWebデザイナー・UX設計者に読み継がれる教科書になりました。日本語版も翻訳され、情報設計の学習における必読書として定着しています。

業界の体感として、近年では情報設計の対象範囲が拡大しています。Webサイトだけでなく、スマートフォンアプリ、社内イントラ、業務システム、ECサイト、すべてのデジタルプロダクトで情報設計の重要性が認識されています。コンテンツ量が増えるほど、情報設計の質がユーザー体験を決める比重が大きくなる構造です。

もう一つ重要な進化として、AI検索・音声検索の普及で情報設計の役割が変わりつつあります。従来は「ユーザーが視覚的にメニューを辿る」前提でしたが、今は「AIが情報を構造化して提示する」「音声で情報を呼び出す」場面が増加。情報の構造化・メタデータ整備の重要性が、AI時代でさらに高まっています。

業界の現場として、情報設計を専門で担う「Information Architect(IA)」「UX Architect」という職種も定着してきました。Webデザイナー・エンジニアとは別職種で、サイトの構造設計に特化した専門家。大規模サイト・複雑なBtoBサービスでは、専門IAの介入が標準的になっています。

情報設計の現場で何が起きているか

情報設計の現場で、具体的に何が起きているか。5段階で整理します。

ステージ1:コンテンツ棚卸し(Content Inventory)

まず既存サイトの全コンテンツを洗い出します。何ページあるか、各ページがどのカテゴリに属しているか、ページごとの目的・ターゲット・優先度、すべてスプレッドシートで一覧化する作業です。Excel・Google Sheetsで「URL」「タイトル」「カテゴリ」「目的」「最終更新日」「アクセス数」を列に並べ、サイト全体を俯瞰します。

コンテンツ棚卸しの目的は、サイトの全体像を把握すること。「思っていたよりページが多い」「重複コンテンツがある」「役割不明のページが残っている」、こういう発見がほぼ必ずあります。100ページ規模で1〜2日、1000ページ規模で1〜2週間の作業ボリュームが標準です。地味な作業ですが、情報設計の最重要工程の一つ。

ステージ2:カードソート実施

ユーザーの頭の中で情報がどう整理されているかを調査する手法。1ページ1枚のカードを用意し、ユーザーに「自分が直感的に分類したい形で並べてください」と依頼します。オープン式(ユーザーが自由にカテゴリ名を付ける)とクローズド式(既存カテゴリに振り分ける)の2種類があります。

カードソートで見えてくるのは、設計者の頭の中とユーザーの頭の中の「ズレ」。サイト運営者は内部の組織構造で分類しがちですが、ユーザーは別の軸(目的別・状況別・対象別)で情報を探しています。5〜10名のユーザーでカードソートを実施し、共通する分類パターンを抽出することで、ユーザー視点の情報構造が見えてきます。

ステージ3:サイトマップ作成(Sitemap Design)

コンテンツ棚卸しとカードソートの結果から、サイト全体の構造図を作成。トップページ→大カテゴリ→中カテゴリ→詳細ページ、こういう階層構造を視覚化します。図はFigma・MIRO・XMindなどのツールで作成するのが一般的。

サイトマップ作成で重要なのは、階層の深さと幅のバランス。1階層に20カテゴリ並べるのも、5階層下に潜らせるのも、どちらも悪い設計です。1階層あたり5〜7項目、最大3階層程度、これが業界の体感での標準的な深さ。3クリックルール(目的ページに3クリックで到達できる)を満たすことが目標です。

ステージ4:ワイヤーフレーム化

サイトマップを元に、各ページのレイアウト案(ワイヤーフレーム)を作成。各ページのナビゲーション配置、コンテンツの優先順位、パンくずリスト、関連リンク、すべて図で具体化します。デザインの装飾は入れず、構造と要素配置に集中する作業です。

ワイヤーフレーム段階で確認するのは、ユーザーが各ページから次にどこへ進めるかという動線。トップページから商品詳細へ、商品詳細から関連商品へ、関連商品から購入フローへ、こういう自然な遷移ができる構造かどうかをチェックします。Figma・Adobe XD・Whimsicalなどのツールで作成するのが標準です。

ステージ5:ナビゲーションテスト

サイトマップ・ワイヤーフレーム完成後、実際のユーザーにナビゲーションテストを実施。「商品Xを探してください」「お問い合わせフォームまでたどり着いてください」、こういう具体的タスクをユーザーに依頼し、所要時間・クリック数・迷ったポイントを観察します。

5〜10名のユーザーテストで、情報設計の問題点がほぼ可視化されます。「商品カテゴリのラベルが分かりにくい」「3階層目に隠れていて見つけられない」「検索とナビゲーションの併用ができない」、こういう具体的なフィードバックが得られます。テスト結果を踏まえてサイトマップ・ワイヤーフレームを修正し、再度テスト、というイテレーションを2〜3回繰り返すのが業界の標準フローです。

身近な話で全体像をつかむ

ちょっと身近な話で、全体像を掴み直しましょう。

大型書店や図書館の本棚配置に置き換えてみます。あなたが大型書店で「Webデザインの本」を探している、と仮定します。書店に入った瞬間に、まず大カテゴリ(コンピュータ・ビジネス・実用書・小説・コミック)の看板が見える。「コンピュータ」を選んで進むと、中カテゴリ(プログラミング・Webデザイン・サーバー・データベース)の棚に行き着く。「Webデザイン」の棚に進むと、HTML/CSS・JavaScript・UI/UX、こういう詳細分類が見える。これが3階層構造の典型例です。

大型書店の本棚配置は、まさに情報設計そのもの。客の頭の中で「Webデザインの本=コンピュータ系の中のWebデザイン棚」というイメージがあるので、その思考順序に沿って棚を配置します。逆に、もしWebデザインの本が「ビジネス書」の棚にあったら、客は迷う。「これってビジネス書?コンピュータ書?」と探す手間が増え、結局見つからずに帰ってしまう客が増えます。

図書館の十進分類法(NDC)も同じ発想。0(総記)・1(哲学)・2(歴史)・3(社会科学)・4(自然科学)・5(技術)・6(産業)・7(芸術)・8(言語)・9(文学)、こういう10カテゴリで全書籍を分類しています。日本中のどの図書館に行っても同じ分類体系で本が並んでいるので、利用者は1度ルールを覚えれば全国の図書館で迷わず本を探せます。情報設計の「一貫性」が極めて重要な理由です。

情報設計の本質はここです。「ユーザーの頭の中の整理パターン」と「サイトの構造」を一致させること。図書館員が自分の整理基準で本を配置するのではなく、利用者の探し方に沿って配置する。情報設計も同じで、サイト運営者の都合(部署別・組織別)ではなく、ユーザーの探し方(目的別・状況別・対象別)で構造を組むのが正解です。

身近なもう一つの例として、スーパーマーケットの売り場配置。野菜売り場・肉売り場・魚売り場・乳製品・冷凍食品・調味料・お菓子、こういう大カテゴリ分けはどのスーパーでもほぼ共通。これは消費者の買い物パターン(献立を組み立てる順序)に沿った構造です。スーパーごとに分類体系がバラバラだったら、客は毎回迷ってしまいます。情報設計の「業界標準への準拠」も、ユーザビリティを高める重要要素です。

逆に、情報設計が崩れている事例として、家電量販店の一部商品配置があります。「これってカメラ売り場?スマホ売り場?」と迷う商品(スマホ用カメラレンズ等)が、店舗ごとに違う場所にあったり、店内の表示と実際の配置がズレていたり。客は迷い、店員を探して聞かなければならない。情報設計が機能していない状態の典型例です。

Webサイトも全く同じ構造です。ユーザーがサイトに来た瞬間に「私が探している情報は、このメニューのどこにあるか」が直感的に分かる構造になっているか。3クリック以内に目的のページにたどり着けるか。これが情報設計の質を決める指標です。

情報設計の3原則

3原則を守れば情報設計の8割は機能する”} –>

情報設計には数十の理論・手法がありますが、実務で本当に効くのはこの3原則だけです。3原則を守れば、サイトの情報設計は8割機能する状態になります。逆に、3原則のどれか1つでも崩れると、サイト全体のユーザビリティが大きく下がります。

原則1:階層の深さ最適化(3クリックルール)

情報設計の第一原則は、ユーザーがトップページから目的ページまで「3クリック以内」で到達できる構造を作ること。これは業界で広く知られる「3クリックルール」と呼ばれる経験則です。4クリック・5クリックと深くなるほど、ユーザーの離脱率が上がっていきます。

3クリックを実現するには、1階層あたり7±2項目(マジカルナンバー7)を意識します。人間の短期記憶は5〜9項目までしか保持できないため、それを超えるとユーザーが混乱します。トップページに大カテゴリ7つ、各大カテゴリに中カテゴリ7つ、各中カテゴリに詳細ページ、この階層なら最大3クリックで7×7×7=343ページに到達可能。中規模サイトはこの構造で十分カバーできます。

大規模サイト(数千ページ規模)では、3階層では収まらないため、4階層構造を採用しますが、メイン動線は3クリック以内に保つ工夫が必要。具体的には、頻繁にアクセスされる主要ページを上位階層に配置し、まれにしかアクセスされないページを下位階層に配置する優先度設計を行います。アクセス頻度の高い情報を浅く、低い情報を深くする、これが業界の標準的アプローチです。

逆に、階層が浅すぎる(1階層に20項目並ぶ)のも問題です。一覧として情報量が多すぎ、ユーザーが選択しきれない「選択肢過多のパラドックス」が発生します。1階層10項目を超えるなら、サブカテゴリでさらに分類する設計が必要。深すぎず浅すぎない、絶妙なバランスが情報設計の腕の見せ所です。

原則2:ナビゲーションの一貫性(Navigation Consistency)

情報設計の第二原則は、サイト内のすべてのページで、ナビゲーションの配置・ラベル・動作が一貫していること。トップページではメニューが上部にあるのに、商品ページでは左サイドにあったり、お問い合わせフォームでは消えていたり、こういうのは絶対NGです。

ナビゲーションの一貫性が崩れると、ユーザーは「今どこにいるか分からない」「次にどこへ行けばいいか分からない」状態に陥ります。サイト内の移動コストが上がり、結果として離脱率が上昇します。具体的には、グローバルナビゲーション(全ページ共通の上部メニュー)、パンくずリスト(現在地表示)、サイドナビゲーション(セクション内移動)、フッターナビゲーション(全体一覧)、この4種類のナビゲーション要素を全ページで統一的に配置するのが業界の標準。

ラベル(メニュー名)の一貫性も重要です。「商品一覧」というメニュー名を使ったページと、「製品リスト」というメニュー名を使ったページが混在すると、ユーザーは混乱します。同じ内容を指すラベルは1つに統一する、これが基本ルール。サイト内のラベル統一は、コンテンツ棚卸し段階で必ず実施すべき作業です。

動作の一貫性も忘れがちですが重要。トップページではクリックで遷移するメニューが、別ページではホバーで展開するドロップダウンになっていたり、こういう動作の不一致もユーザーを混乱させます。インタラクションのパターンも全ページで統一する、これが原則です。デザインシステムの導入で、ナビゲーションの一貫性を技術的に担保するアプローチが、近年の主流になっています。

原則3:検索可能性とブラウザビリティ(両方の経路を提供)

情報設計の第三原則は、ユーザーが「探す経路」と「巡る経路」の両方を提供すること。具体的には、検索機能(Search)とナビゲーション(Browse)、この2つの経路を必ず併設します。どちらか一方だけでは、ユーザーの行動パターンに対応しきれません。

検索可能性(Searchability)とは、ユーザーが目的の情報を「キーワードで直接呼び出せる」能力。サイト内検索バー、検索結果の精度、検索候補のサジェスト、フィルター機能、すべて検索可能性に含まれます。サイトのトップページに検索バーを目立つ位置に配置し、検索結果ページではフィルター・並び替えで絞り込みできる構造が、業界の標準です。

ブラウザビリティ(Browsability)とは、ユーザーが目的を持たずに「サイト内を巡り歩く」能力。トップページの特集コーナー、関連商品の表示、おすすめ記事のレコメンド、カテゴリの一覧表示、これらすべてがブラウザビリティを支える要素です。「何となく見ていたら、欲しい情報を見つけた」という体験を作る設計が、ブラウザビリティの本質です。

業界の体感では、ユーザーの行動パターンは「目的型(検索する)」と「探索型(巡る)」の2極に分かれます。目的型ユーザーは検索バーを使い、探索型ユーザーはナビゲーションを辿ります。どちらか一方しか提供しないサイトは、片方のユーザー層を逃すことになります。両方の経路を提供することで、サイト全体のCVRを最大化する設計が必須です。

3原則を統合すると、「3クリック以内で目的に到達できる階層構造」「全ページで一貫したナビゲーション」「検索とブラウズの両方の経路」、この3つを満たすサイトが情報設計として機能している状態です。1つでも欠けると、ユーザーは迷い、離脱します。逆に、3つすべて満たせば、サイトの基礎体力として情報設計は十分機能するレベルになります。

情報設計で失敗する典型3パターン

うちの事業でWebサイト・LPを長年運用してきた中で、情報設計失敗の典型パターンはこの3つに集約されます。

パターン1:自社視点で分類してしまう

もっとも多い失敗。サイト運営者が自社の組織構造や事業部の都合でカテゴリを切ってしまうパターン。「営業部のページ」「開発部のページ」「総務部のページ」、こういう内部都合の分類は、ユーザーにとって意味不明です。ユーザーは「自分が解決したい課題」「自分のステータス」を起点に情報を探すので、組織別分類は機能しません。

本来は、ユーザーの課題・目的を起点にカテゴリを設計します。「初めての方へ」「料金プラン」「導入事例」「サポート」、こういうユーザー視点の分類が業界標準。カードソートを実施して、ユーザーの頭の中の分類パターンを確認した上で、サイトのカテゴリ構造を組むのが正解です。

パターン2:階層が深すぎる(5階層以上)

2番目に多いのが、階層を深く掘り下げすぎてしまうパターン。コンテンツを細かく分類しすぎて、トップから目的ページまで5階層・6階層も潜らないとたどり着けないサイトです。1階層下がるたびにユーザーの離脱率は2〜3割上がるので、5階層構造だと、たどり着くまでにほとんどのユーザーが離脱します。

本来は、3階層を基本に、最大でも4階層までに収めます。階層を深くする代わりに、関連リンク・パンくず・サイドナビゲーションで横移動を強化するのが業界の標準。「縦の深さ」より「横のつながり」で情報構造を支える設計が、ユーザビリティを高めます。

パターン3:メニュー名(ラベル)が抽象的すぎる

3番目によくあるのが、メニュー名(ラベル)を抽象的にしすぎて、ユーザーが何を指すか分からないパターン。「ソリューション」「サービス」「プラットフォーム」「ビジョン」、こういう抽象語をメニュー名に使うと、ユーザーは中身が想像できず、クリックしません。

本来は、具体的で説明的なラベルを使います。「ソリューション」ではなく「業種別の活用事例」、「プラットフォーム」ではなく「料金プラン」、「ビジョン」ではなく「会社の取り組み」、こういう具体ラベルの方がクリック率が圧倒的に高い。ユーザーテストでラベル候補を3〜5案出し、最もクリックされたラベルを採用する、これが業界のベストプラクティスです。

うちの事業で運用してわかった本音

うちの事業で複数のWebサイト・LP・教材サイト・会員サイト、こういう情報量の多いサイトを長年運用してきました。その経験から、見えてきた本音をお伝えします。

本音1:情報設計を後回しにしたサイトは必ず作り直しになる

うちの事業で何度も体験したのが、情報設計を後回しにしてとりあえずページを作ったサイトは、半年〜1年後に必ず作り直しになるという現実。最初は「ページが少ないからこれでいい」「後で整える」と思っていたんですが、コンテンツが増えるにつれて構造が破綻していきます。

具体的には、ページを追加するたびに「これってどのカテゴリに入れる?」と毎回迷い、なし崩しでカテゴリを増やしていく。気がつくと20カテゴリ・5階層構造になり、ユーザーが目的ページにたどり着けない状態になります。サイト全体のCVRが下がり、直帰率が上がり、結局ゼロからサイトマップを組み直すことになる。最初に1〜2日かけて情報設計を作っておけば防げた損失です。

業界の経験則として、サイトが30ページを超える時点で情報設計の見直しが必須になります。30ページまでなら直感で構造を維持できるが、それを超えるとカテゴリ分類・階層設計の根拠が必要になる。30ページが情報設計の「最初の境界線」と覚えておくと、見直しタイミングを逃しません。

本音2:カードソートで顧客の頭の中構造が見える

うちの事業でユーザーリサーチを実施した経験から、カードソートが情報設計の最強の武器だと実感しています。設計者の頭の中で「これはこのカテゴリに属する」と思っていた分類が、ユーザーの頭の中では全く違う構造になっていることが、ほぼ毎回判明します。

具体的なケースとして、うちの事業では「メルマガ」「ステップメール」「ブロードキャスト」、こういう用語をユーザーがどう分類するかをテストしたことがあります。設計者側は「メルマガ・ステップメール=配信方法、ブロードキャスト=配信形式」と分類していたんですが、ユーザーは「メルマガ・ブロードキャスト=単発配信、ステップメール=自動配信」と分類していた。設計者の頭の中とユーザーの頭の中で、分類軸が根本的にズレていた事例です。

この発見からサイトの構造を「単発配信(メルマガ・ブロードキャスト)」「自動配信(ステップメール)」というユーザー視点の分類に組み直したら、該当カテゴリのページのクリック率が約2倍に上がりました。カードソート1回の実施(3時間程度)で、サイト全体の成果が大きく変わる。情報設計におけるカードソートの費用対効果は極めて高いと実感しています。

本音3:ナビ階層は3階層が黄金、5階層超えると離脱激増

うちの事業でアクセス解析を続けてきた中で、最も明確に出た傾向が「ナビ階層は3階層が黄金、5階層超えると離脱激増」というデータです。3階層構造のページ群は直帰率30〜40%程度、4階層では50〜60%、5階層では70〜80%、こういう段階的な離脱率上昇が観察されました。

具体的に、うちの教材会員サイトで実験したのが、5階層構造を4階層に圧縮した時のCVR変化。「コース→章→セクション→単元→詳細ページ」という5階層を、「コース→章→単元(セクションは廃止)→詳細」の4階層に変えただけで、各単元のクリック完了率が約1.5倍に上昇しました。階層を1つ減らすだけで、ここまで成果が変わる。階層数の重みは想像以上です。

3階層を超える設計が必要な大規模サイトでは、「関連リンク」「パンくず」「サイドナビゲーション」を強化することで、縦の深さを横のつながりで補強する設計が業界標準。階層を物理的に浅くできない場合は、横移動の経路を増やして、ユーザーが「迷子」にならない仕組みを作ります。

もう一つ重要なのが、検索機能との併用。3階層を超える深さがあっても、検索バーで直接目的ページに飛べるなら、実質的な「経路の深さ」は1クリックです。検索可能性を強化することで、階層の物理的深さによる離脱を防げます。階層設計と検索機能の組み合わせで、情報設計の機能性を最大化する、これがうちの事業で学んだ最重要原則です。

情報設計の5STEP

ここまで読んでくださった方、お疲れさまです。情報設計を実際に始めるための、明日から使える5ステップを置いておきます。

STEP1
既存コンテンツの棚卸し

Google Sheetsで「URL」「タイトル」「カテゴリ」「目的」「アクセス数」を一覧化。サイトの全ページを俯瞰し、重複・役割不明ページを発見。サイトの現状把握から始めます。

STEP2
ターゲットユーザーの明確化

「このサイトを誰が、どんな目的で訪れるか」を3〜5パターンのペルソナで言語化。ペルソナごとに「最頻アクセスページ」「典型的な訪問動線」を整理。ユーザー視点の起点を確定します。

STEP3
カードソートの実施

5〜10名のユーザーにカードソートを依頼。オープン式(ユーザーが自由にカテゴリ名を付ける)で、ユーザーの頭の中の分類パターンを抽出。設計者視点との「ズレ」を発見します。

STEP4
サイトマップ作成と3原則チェック

Figma・MIRO・XMindでサイトマップを作成。3原則(3クリック以内・ナビ一貫性・検索とブラウズ両方)で構造をチェック。1階層7±2項目、最大3階層を基本に組み立てます。

STEP5
ユーザーテストで検証と修正

5〜10名のユーザーにナビゲーションテストを実施。「商品Xを探してください」のタスクで所要時間・迷いポイントを観察。テスト結果でサイトマップを修正、2〜3回のイテレーションを回します。

この5ステップを順番に実行すれば、情報設計の基盤がほぼ整います。完璧を狙う必要はありません。最初は3割の精度でも、ユーザーテストで修正を重ねれば、徐々に機能する情報設計に近づいていきます。シンプルですが機能する情報設計の骨格が完成します。

セットで知っておくべき関連用語
Richard Saul Wurman
「Information Architecture」という言葉を1976年に提唱したアメリカの建築家・情報デザイナー。TEDの創設者でもある。
カードソート
ユーザーの頭の中の分類パターンを調査する手法。1ページ1枚のカードをユーザーに分類してもらい、ユーザー視点の情報構造を抽出する。
サイトマップ
サイト全体の構造を視覚化した図。トップページから階層的に各ページを配置し、サイトの全体像を一目で把握できる。
ナビゲーション
ユーザーがサイト内を移動するための仕組み。グローバルナビ・パンくず・サイドナビ・フッターナビの4種類を組み合わせて構成する。
Peter Morville
書籍『Information Architecture for the World Wide Web』(通称シロクマ本)の共著者。情報設計の体系化に貢献。

よくある質問(FAQ)

情報設計とSEOの関係は?

情報設計はSEOにも直接的に効きます。Googleはユーザーが目的の情報にたどり着きやすい構造を高く評価するため、3クリック以内で全ページに到達できる構造、適切なパンくずリスト、内部リンクの最適化、これらすべて情報設計とSEOの両方に効きます。情報設計が良いサイトはSEOも自然に強くなる構造です。

情報設計とUXデザインの違いは?

情報設計はUXデザインの構成要素の一部です。UXデザインはユーザー体験全体を扱い、その中の「情報構造の設計」を担うのが情報設計。具体的には、ストラテジー・スコープ・ストラクチャー・スケルトン・サーフェスというUX要素の5段階モデルにおいて、ストラクチャー層が情報設計に該当します。UXの上流工程として位置付けられます。

情報設計の所要工数の目安は?

業界の体感では、サイト規模で大きく変動します。100ページ規模のサイトで2〜4週間、500ページ規模で1〜2ヶ月、1000ページ超では3〜6ヶ月程度。コンテンツ棚卸し・カードソート・サイトマップ作成・ユーザーテスト、すべて含めた所要時間です。リニューアル時はゼロから組み直すため、新規サイト構築と同程度の工数がかかります。

情報設計のツール比較は?

業界で使われる主要ツールは以下です。コンテンツ棚卸しはGoogle Sheets・Excel、カードソートはOptimalSort・UsabilityHub、サイトマップ作成はFigma・MIRO・XMind・Whimsical、ワイヤーフレームはFigma・Adobe XD・Sketch。中でもFigmaは情報設計からワイヤーフレーム・デザインまで一貫して使えるため、近年の業界標準ツールとして定着しています。

Webサイト規模別の設計法は?

業界で語られる目安は以下です。

サイト規模標準階層主要ナビ
小規模(〜30ページ)2階層グローバルナビのみ
中規模(30〜300ページ)3階層グローバル+パンくず+サイドナビ
大規模(300〜1000ページ)3〜4階層グローバル+パンくず+サイドナビ+検索
超大規模(1000ページ超)4階層+検索上記+ファセット検索+レコメンド

規模に応じてナビゲーション要素を段階的に増やすのが標準アプローチです。

まとめ

で、結局情報設計とは、こういうことです。

  • 情報設計の核心は「サイトマップを作ること」ではなく「ユーザーが目的情報に最短経路で迷わずたどり着ける構造を設計すること」
  • 本質はデザインではなく、ユーザーの頭の中の整理パターンとサイト構造を一致させること
  • 3原則(階層の深さ・ナビゲーションの一貫性・検索とブラウズの両立)を守れば、情報設計は8割機能する

サイトを美しく整えるより、ユーザーが迷わず使える構造を作ること。これが情報設計の本来の役割です。検討しているなら、まず既存サイトのコンテンツ棚卸しから始めてみてください。

ではでは。

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この記事を書いた人

株式会社Cameen代表 西村温裕(Haruhiro)。2019年からコンテンツビジネスを8年運営。

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