STP分析とは?8年運用してわかった『3段階意思決定プロセスの正体』と設計の正解

STP分析』って、ぶっちゃけ意味わかってますか?

株式会社Cameen 西村温裕ことおんゆーです。

この記事でわかること
  • STP分析とは「マーケの基本フレーム」ではなく「市場を切り取って自社の立ち位置を確定する戦略決定の3段階プロセス」
  • 本質は「3要素を埋める」ではなく、SegmentationでターゲットされたToTargetingで選び、Positioningで居場所を確保する一連の意思決定
  • 設計の正解は市場全体を見渡してから絞り込むこと(自社強みから始めると崩壊する)
  • 機能しないSTP設計には3つの典型パターンがある
  • 今日から使える設計5ステップで骨格が組める

で、SNSを開いてもマーケの本を開いても、出てくる出てくる。「STP分析が基本」「Segmentation→Targeting→Positioning」「コトラーの戦略フレーム」と。いやちょっと待ってください。そもそもSTPって、結局なんのために何をする分析なんですか?というところなんですよね。

なんとなくのイメージはあると思います。市場を分けてターゲット選んでポジションを決めるやつでしょう?と。でも、いざ「自分の事業のSTPを1枚で書いて、3要素間の整合性を説明してください」と言われると…意外と詰まる。「STPフレームは埋めました」までは出るけど、それが「戦略決定にどう活きたか」、まったく言語化できない。

これ、自分だけだと思ってませんか?

うちの事業でマーケ戦略を8年やってきて、自社運用とクライアント案件を合わせるとSTP分析に関わった案件数は100本を超えています。その中でいろんな受講生さんや代行先と話してきたんですが、「STP書いたけど戦略に繋がらない」「フレームワーク埋めて終わり」という相談は本当に多いんです。話を深掘りしていくと、ほぼ全員が「STPそのものの正体」を掴めていないまま、なんとなく3要素を並べている。そういう共通パターンが見えてきたんですよね。

今回はその「今さら聞けないSTP分析」を、表面的な解説ではなく、構造の核心と設計の正解まで一気に深掘りしていきます。読み終わる頃には、自分の事業のSTPが「なぜ戦略に活きないか」「どこから組み直せばいいか」が、紙に書き出せるレベルになっているはずです。

目次

結論:STPの核心は『3要素列挙』ではなく『3段階意思決定』

結論

結論を言ってしまうと、STP分析は、よく「3要素を並べる基本フレーム」と説明されるんですが、これは半分正解で半分間違いです。

STP分析の本当の正体は、「『市場全体を切り分ける(S)→狙うべき塊を選ぶ(T)→そこでの自社の立ち位置を決める(P)』という戦略決定の3段階プロセス」なんですよね。

「3要素フレーム」というのは、結果としてそうなっているだけ。3段階の意思決定を順番に行うから、結果的に3要素のフレームに見える、というのが正しい順序です。3要素そのものは、STPの「外見」であって「本質」じゃないんです。

じゃあ本質は何かというと、SはどんなセグメントがあるかMappping、TはどのセグメントをターゲットにするかDecide、PはそのセグメントでどんなPositionを取るかDecide。『S→T→Pの順序』が崩れると、STPは機能しません。これが心臓部です。

で、なぜここを最初にハッキリさせるかというと、ここを「3要素列挙」だと思い込んでいる人は、STPを「フレームワーク埋める作業」と解釈して、大体崩壊するからなんですよね。STP表完成、はい完了、と。

それはSTP分析ではなく、ただの「フレームワーク埋め」になってしまいます。3段階の意思決定がないので、戦略として機能しない、というよくある袋小路になります。

なぜ『STP』と呼ばれるのか。構造的な理由を掘り下げる

もう少し深く掘ります。

なぜこの分析は「STP」と呼ばれるのか。これには、ちゃんと理由があります。

3つの英単語の頭文字です。Segmentation(市場の細分化)→Targeting(狙うセグメント選定)→Positioning(立ち位置確保)。フィリップ・コトラーが提唱したマーケティング戦略の基本フレームワーク。順序が大事で、S→T→Pの流れを守ることで戦略が一貫します。

たとえば、うちの事業のSTPはS=コンテンツビジネス全体を『初心者・中級・上級』『個人・法人』『コーチング・物販・SaaS』で細分化→T=『中級個人コーチング』を狙う→P=『中価格×伴走型×8年運用実績』のポジションを取る。3段階の意思決定が連鎖して戦略になっています。

ここで重要なのは、「STPは『3段階全てを通過』して初めて戦略になる」ということなんですよね。Sだけ(市場を分けただけ)、Tだけ(ターゲット選んだだけ)、Pだけ(ポジション決めただけ)は不完全。3段階を順番に通過することで、戦略の整合性が確保されるのがマーケティングの基本原理です。

たとえば、Sなしで突然『中級個人コーチングをターゲットにします』と言うのは、市場全体を見ずに自社強みで決めただけ。『なぜそのセグメントなのか』の根拠が市場全体から導かれていないと、戦略が脆弱になります。Sがあるからこそ、Tに根拠が生まれます。

ここ、勘違いしている方が本当に多いです。「STPの3要素を並べる」のではなく、「3段階の意思決定を順番に行う」が正解です。

STP分析するとき『マーケターの頭の中』で何が起きているか

もう1つ、STPの核心を掴むために大事な視点があります。それは「STP分析するとき、マーケターの頭の中で何が起きているか」です。これを理解しないままフレームを埋めても、戦略に活きません。

STP分析するとき、優れたマーケターの頭の中はこう動いています。

  • 「市場全体はどう細分化できる?」(Segmentation検討)
  • 「各セグメントの規模・成長性・競合状況は?」(セグメント評価)
  • 「自社が勝てるセグメントはどれ?」(Targeting選定)
  • 「そのセグメントでの競合は?」(競合分析)
  • 「競合と差別化された立ち位置は?」(Positioning確定)

この5ステップでSTP分析が戦略決定に繋がります。市場全体→セグメント評価→ターゲット選定→競合分析→ポジショニングの流れ。各ステップで意思決定をすることで、最終的に強い戦略が生まれます。

たとえば、Segmentation段階で『コンテンツビジネス市場』を10セグメントに細分化したとして、その中から『中級個人コーチング』を選ぶのには根拠が必要。『市場規模300億円・年間成長15%・競合10社の中で大手1強』のような根拠から、Targetingを判断します。

もう1つ、Positioningは『そのセグメント内での差別化』。『大手は安価・短期、自社は中価格・伴走型』のような明確な差別化軸が必要。これがあって初めて、ターゲットセグメントで勝てる戦略になります。

うちの事業でSTP代行をやってきた中で、「STP書いたけど戦略に繋がらない」という相談の9割は、『3段階の意思決定をせず、3要素を埋めただけ』が原因でした。フレームワークではなく、意思決定プロセスとしてSTPを使うのが本物の運用です。

身近な話で全体像をつかむ

ここまでで「STPは3段階意思決定プロセス」「S→T→Pの順序が大事」という話をしました。ただ、ここで一旦、専門用語から離れて、身近な話に置き換えて全体像を掴んでおきましょう。

引っ越し先選び、想像してみてください。あれ、よく考えてみてください。完全に「STP」と同じ構造になっているんです。

引っ越し先を決めるとき、まず『市内の全エリアを家賃・通勤時間・治安・施設』で細分化(Segmentation)。次に、自分の条件(『家賃15万以内・通勤30分以内・治安良好』)に合うエリアを選ぶ(Targeting)。最後に、選んだエリア内で『どの物件にするか』を決める(Positioning)。STPと完全に同じ構造です。

引っ越し失敗パターンは、Segmentationなしで物件選びから始めること。『物件A良さそう』と直感で選んで、後で『家賃が予算オーバー、通勤も遠い』と後悔。市場全体を見ずに決めると、結果的に失敗する。マーケの戦略決定と同じ原理です。

賢い引っ越し選びは、必ず市場全体マップから始めます。『市全体のエリア地図』→『自分の条件で絞ったエリア』→『そのエリア内の最適物件』の順。これがS→T→Pです。順序を守ることで、最終的な選択が論理的になります。

もう1つ、引っ越しのPositioningも大事です。同じエリア内でも『駅近×家賃高め×新築』『駅遠×家賃安め×古め』など、ポジションが違う物件があります。自分のライフスタイルに合うポジションを選ぶ。マーケのPositioningも、競合との差別化軸を選ぶ。同じ構造です。

そして、引っ越し選びでは『家族構成変化』『転職』などで条件が変わったら、STPを再評価する必要があります。マーケのSTPも、年1回は市場変化・自社状況変化に合わせて再評価するのが現代の運用です。

この比喩を頭に入れておくと、自分のSTP分析を見るときに「これは『引っ越し選び』レベルに、市場全体から逆算して順番に決定しているか」というふうに、判断基準がいつもクリアになります。ぜひ覚えておいてください。

STPが『機能する』とはどういう状態か

では、STP分析が「機能している」とは、具体的にどういう状態のことを言うのか。ここを数値と構造で明確にしておきます。

機能しているSTP分析には、3つの特徴があります。

機能するSTPの3条件
  • Segmentationが市場全体を網羅:5〜10セグメントに細分化されている
  • Targetingに明確な根拠がある:なぜそのセグメントか説明可能
  • Positioningが競合と差別化:他社にはない立ち位置

1つずつ補足します。

1つ目、「Segmentationが市場全体網羅」。市場全体を5〜10セグメントに細分化、各セグメントの規模・成長性・競合状況を把握。一部だけ見るのではなく、全体像を持つことが意思決定の前提です。

2つ目、「Targetingに根拠」。『市場規模300億・成長15%・大手1強』のような根拠データに基づいてターゲットを選ぶ。直感ではなくデータで判断するのが、強いSTPの条件です。

3つ目、「Positioningが差別化」。競合との明確な差別化軸が言語化できている。「大手は○○、自社は○○」と1文で説明可能。差別化なきポジションは、競合と同質化して埋もれます。

この3つが揃って、初めてSTPが「機能している」と言えるんですよね。多くの事業は1つ目の『市場全体網羅』をせず、自社視点だけでSTPを書く、というよくあるパターンです。

STP設計が『機能しない』典型パターン3つ

逆に、STP設計が機能しない典型パターンも整理しておきます。うちの事業で100本超の案件をやってきた中で、「これ、また同じやつだ」というパターンが3つ繰り返し出てきます。

機能しないSTP 3パターン
  • パターン1:自社強み起点症候群(市場全体を見ずに自社視点で選ぶ)
  • パターン2:Segmentation粗い症候群(2〜3セグメントしか分けない)
  • パターン3:Positioning曖昧症候群(競合差別化が言語化されていない)

1つずつ深掘りします。

パターン1:自社強み起点症候群。これが一番多いです。Sを飛ばして自社視点でTを決めるパターン。『うちは中級個人コーチングが得意だから、そこを狙う』だけでは戦略の根拠が弱い。市場全体を見ない判断は、市場変化に脆い戦略になります。

解決策は、必ずSegmentationから始める。『市場全体を5〜10に細分化して、各セグメントの規模・成長性・競合を評価』してからTargetingに進む。順序を守ることが、戦略の堅固さを生みます。

パターン2:Segmentation粗い症候群。Sを2〜3セグメントしか分けないパターン。細分化が粗いと、本来狙えるニッチセグメントが見えない。「個人・法人」程度の粗い分け方では、戦略の精度が出ません。

解決策は、複数の軸でSegmentationする。『規模(個人/法人)×レベル(初級/中級/上級)×業種(コーチング/物販/SaaS)』のように3軸でクロス、5〜10セグメントに分けます。これで詳細な市場マップが描けます。

パターン3:Positioning曖昧症候群。「中価格帯×伴走型」のような抽象ポジショニングのパターン。具体的に競合と何が違うか説明できない。曖昧なポジションは、顧客の脳内に書き込まれません。

解決策は、競合分析を必ずセットで行う。『大手A社は○○戦略、中堅B社は○○戦略、自社はそこに対して○○で差別化』のように、競合との対比で自社ポジションを明確化します。

うちの事業で運用してわかった本音

ここまで構造の話を中心にしてきましたが、ここからは少しだけ本音の話をします。うちの事業でSTPを8年運用してきて、最初は自社強み起点で市場を見ずに決めて、何度も戦略が市場とズレて、今のスタイルにたどり着いたんですよね。

1つ目の本音。「STPは『1回作って終わり』ではなく『毎年更新』」。これが一番大事です。市場変化・競合参入・自社成熟で、STPは年単位で進化する。年初に必ずSTPを再評価して、必要な調整を加えます。固定的なSTPは時代遅れになります。

2つ目の本音。「Segmentationの軸選定が9割」。意外と知られていません。同じ市場でも、軸が違えば見えるセグメントが全く違う。価格×品質で見るのと、初級×上級で見るのと、個人×法人で見るのでは、結論が変わる。複数軸で見比べるのが本物の運用です。

3つ目の本音。「Targetingは『勝てる場所』を選ぶ」。大きい市場でも、自社が勝てなければ意味がない。『市場規模 × 競合の弱さ × 自社の強さ』で勝てる場所を見極める。大きい市場を狙って大手に負ける戦略は最悪です。

4つ目の本音。「Positioningは『1文で言える』こと」。複雑なポジショニングは記憶されない。『うちは中価格×伴走型×実績重視』のように1文で簡潔に言えるのが理想。複雑なら、まだPositioningが定まっていない証拠です。

最後にもう1つ。「STPは『4P・4C』とセットで完成」。STPで戦略決定、4P・4Cで実行設計、というのが理想の連携。STPだけだと戦略止まり、4P・4Cだけだと方向性なき実行。両方持つことで、戦略から実行までの一貫性が生まれます。

今日から使える設計ステップ5つ

では、実際にSTP分析を組み立てるとき、何から手をつければいいか。今日からそのまま使える5ステップに整理しました。

STEP1
市場全体を3軸でSegmentation

『規模×レベル×業種』など3軸でクロスして5〜10セグメントに細分化。市場全体を網羅する細分化が起点です。

STEP2
各セグメントを評価

各セグメントの『規模・成長性・競合状況・参入難易度』を評価。データに基づいて『勝てる場所』を見極める材料を作ります。

STEP3
Targeting:1〜2セグメントに絞る

5〜10セグメントの中から、自社が勝てる1〜2を選ぶ。3つ以上のターゲットは戦略が分散します。1〜2に集中するのが正解。

STEP4
競合分析

選んだセグメントの主要競合3〜5社を分析。各社のポジショニング・強み・弱みを言語化。これがPositioningの設計材料です。

STEP5
Positioning:1文で差別化を確定

競合との差別化軸を1文で確定。「大手は○○、自社は○○」と明確に言語化。これがSTP分析の完成形です。

設計の正解は逆算

5ステップを並べて気づいた方もいるかもしれません。STP分析の設計は、「市場全体から逆算」するのが正解です。自社強み起点だと、ほぼ間違いなく崩壊します。

多くの人がやってしまう間違いがこれです。「うちの強みはこれだから、そこを狙おう」と自社視点で始める。すると、市場全体を見ない判断になり、市場変化に脆い戦略が出来上がる、というあるあるパターンに突入します。

正解は逆。『市場全体をSegmentation』してから、勝てるセグメントをTargeting、そこでのPositioningを確定。S→T→Pの順序を守り、各段階で意思決定する。これが正しい順序です。

STPは「フレーム」ではなく「3段階意思決定プロセス」。これを覚えておくだけで、戦略の品質が劇的に変わります。

よくある質問(FAQ)

STPと4Pの違いは?

STPは戦略決定、4Pは実行設計。STPで『誰を狙ってどう立つか』を決め、4Pで『どんな商品・価格・流通・販促で実現するか』を組み立てる。STP→4Pの順で連携します。

Segmentationの軸は何を選ぶ?

業界による。BtoC=年齢・性別・所得・ライフスタイル、BtoB=企業規模・業界・課題・購買決定者、共通=価格帯・利用頻度・関心領域。3軸クロスで5〜10セグメントが現実的な細分化です。

Targetingは何個に絞る?

1〜2セグメント。3つ以上は戦略が分散して、どこでも勝てなくなる。『狭く深く』が中小事業の生存戦略。複数狙いたい場合は時系列で順次展開します。

Positioningの差別化軸が見つからない場合は?

『新しい2軸』を発明する。既存の差別化軸が埋まっていても、別の軸で空白を見つけられる。『価格×品質』が埋まっていても、『気軽さ×本格度』なら空白があるかも。リフレーム発想が上級者の手法です。

まとめ

この記事の結論
  • STP分析の正体は「3要素フレーム」ではなく「3段階意思決定プロセス」
  • 設計の正解は市場全体から逆算すること
  • 『S→T→P』の順序を守る
  • 機能しないSTPの3パターン(自社強み起点・Segmentation粗い・Positioning曖昧)を避ける
  • 4P・4Cとセットで実行に繋げる

長くなりましたが、STP分析の正体と設計の正解を、構造の核心まで深掘りしてきました。

もう一度だけ整理します。STPは3要素を並べるフレームワークではなく、市場を切り取って自社の立ち位置を確定する3段階意思決定プロセス。設計の正解は、自社強み起点ではなく、市場全体をSegmentationしてから順番にT・Pを決めること。年1回見直し、4P・4Cとセットで実行に繋げる。

たぶん、ここまで読んでくださった方は、もう自分の事業のSTPの「どこから直せばいいか」が見えているはずです。あとは市場全体の3軸Segmentationから始めてください。STPは派手なフレームワーク埋めよりも、地味な意思決定プロセスの積み重ねです。地味な作業を続けられる人だけが、半年後に『戦略がブレない事業』を手に入れます。

ではでは、また次の記事で。